2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K03976
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
米谷 健司 東北大学, 経済学研究科, 准教授 (90432731)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 税負担削減行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、企業の税負担削減行動の実態とその決定要因を明らかにすることであり、特に制度的要因と経営者のインセンティブ要因の分析を行う。平成28年度はまず日本企業を分析対象として税負担削減行動の指標として利用される実効税率(ETR:effective tax rate)の実態を分析した。損益計算書上の「法人税、住民税及び事業税」の金額を税引前利益で除したCurrent ETRと、損益計算書上の「法人税、住民税及び事業税」の金額に「法人税等調整額」の金額を加えた法人税等を税引前利益で除したGAAP ETRを取り上げた。さらに、先行研究に従ってそれぞれのETRの短期(1年)と長期(5年)の指標を取り上げた。その結果、日本企業のCurrent ETRは、短期・長期ともに40%~45%の区間に含まれる企業が最も多く、短期よりも長期の標準偏差の方が僅かに小さいものの、あまり差異はないことが明らかになった。この傾向はGAAP ETRについてもほぼ同様であった。さらに、それぞれのETRの持続性分析も行った。Current ETRは短期・長期ともに一定の持続性を持ち、低ETRサンプルの方が高ETRサンプルよりもCurrent ETRの持続性が高いことが明らかとなった。この結果は、税負担削減行動に積極的に従事して一時的にETRを引き下げたとしても将来においてその反転があるという見方に反しており、米国の先行研究と整合的な研究である。ただし、GAAP ETRでは、このような傾向は観察されなかった。これらのETRの実態分析の結果については既に論文としてまとめており、近日中に公表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は日本企業を対象として複数の税負担削減行動の指標を算出し、その実態を分析した。分析結果は近日中に公表予定であり、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度以降は税負担削減行動の決定要因のうち、経営者のインセンティブに焦点をあて、分析を行う予定である。また、税負担削減行動の指標のいくつかは平成28年度の分析では取り扱っていないため、これらの推定作業も行う。そのために必要なデータベースの構築を急ぐ。また、効率的に分析を進めるため、利用可能なデータベース等を契約する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度以降に追加的にデータベースを契約する可能性が生じたため、平成28年度の成果発表等に係る旅費の使用額を制限した結果、差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
追加的にデータベースを契約する必要性が生じる場合はこれにかかる金額に使用する。その必要がない場合は成果発表等に係る旅費として使用する。
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