2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K03976
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
米谷 健司 東北大学, 経済学研究科, 准教授 (90432731)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 税負担削減行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、企業の税負担削減行動の実態とその決定要因を明らかにすることである。平成29年度は、前年度において税負担削減行動の指標として利用される実効税率の実態を分析した結果をまとめ、論文として公表した。また、平成29年度は、税金費用に対する株式市場の評価を分析した。税金費用に対する評価をめぐっては2つの異なる見方が存在する。1つは、税金費用は税引前利益を獲得するために必要な税金コストであり、他の費用項目と同様に価値の喪失に関する情報内容が含まれるという見方である(税金費用のmatching role)。いま1つは、税金費用は課税所得を基礎に決定されるため、会計利益とは異なる潜在的な収益性に関する情報内容が含まれるという見方である(税金費用のproxy-for-profitability role)。そこで、会計情報の価値関連性研究においてしばしば用いられる回帰式(被説明変数に株価を説明変数に1株あたり純資産簿価と1株当たり当期純利益を用いる回帰式と、被説明変数に株式リターンを説明変数に1株当たり当期純利益の変化を用いる回帰式)を利用して、いずれの見方が支配的であるのかを検討した。その結果、税金費用にはmatching roleとproxy-for-profitability roleの情報内容がいずれも反映されているが、回帰式に組み込まれた税金費用以外の説明変数に将来の収益性がどの程度反映されているのかに応じて、支配的な役割が変化することが明らかとなった。これは、株式市場における税金情報の役割を分析する場合に、税金費用のmatching roleとproxy-for-profitability roleの影響を考慮する必要があることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、前年度に行った税負担削減行動の指標の実態分析を論文として公表し、さらに税金費用に対する市場の評価に関する分析結果も論文として公表しており、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
企業の税負担削減行動の実態とその決定要因を制度的要因と経営者のインセンティブに焦点をあてて分析を行う。平成29年度までは制度的要因を中心に分析を進めてきたが、経営者のインセンティブに関する分析を進める必要がある。効率的に分析作業を進めるため、利用可能なデータベースを追加的に契約したり、データ入力のアルバイト等を雇用したりする可能性がある。
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Causes of Carryover |
財務データベースの構築とその分析作業を優先したため、成果報告のための旅費等が計画を下回った。当該繰越額は成果報告のための旅費等に使用するとともに、データ入力作業等のアルバイトの雇用に充当する計画である。
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