2017 Fiscal Year Research-status Report
「統一基準」に基づく地方公共団体の決算情報と予算のリンケージに関する実証的研究
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16K03978
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
大塚 成男 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (20213770)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 智大 亜細亜大学, 経営学部, 准教授 (50609021)
田中 優希 法政大学, 経済学部, 准教授 (00636178)
高須 悠介 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (40757374)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 地方公会計 / 決算情報 / 公共施設の更新 / 固定資産台帳 / 予算編成 / 実証研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度においても、昨年度から継続して、地方公共団体での現地調査を通じて、地方公会計情報の積極的な活用に取り組んでいる団体の現場担当者との意見交換を行う中で、財務書類情報を予算に組み入れる方法についての実証的な調査と実証的な調査のための仮説の検討を行った。 本年度中に現地調査を行ったのは、札幌市、旭川市、袋井市、および砥部町である。それらの団体の財政部門および企画部門の担当者との意見交換を通じて、地方公会計情報の活用を通じて効率的な予算編成を実現しようとする場合、資産情報が最も重要となり、公共施設等の更新計画を介して地方公会計情報と予算とをリンクさせることが現実的な活用方法となり得ることが確認できた。 また、静岡県市町行財政課との協力関係を確立し、静岡県行政経営研究会の活動に参加する中で、固定資産台帳情報に基づく団体間比較を現実に行う分析手法を確立した。この分析手法は、分野ごとの公共施設の住民一人当たりの価額の静岡県内における偏差値を横軸、その分野の公共施設の減価償却率を縦軸として、その団体の公共施設の状況をマッピングした比較図表を作成するものである。その比較図表により、固定資産台帳を中心とする地方公会計情報を用いて、団体間の特徴や、それぞれの団体における公共施設の維持管理における課題を可視化することができることが確認された。そして、複数の先進な団体においては、作成した比較図表に基づく平成30年度予算の編成も行われた。 さらに、本年度においては、地方公共団体の決算数値等に関する市販のデータベースを購入し、その内容を検討するとともに、本研究の目的とする実証的な調査での利用可能性を検討した。それにより、決算情報については限定的であるものの、非財務情報を一括して入手できる点でメリットがあることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究メンバーによる資料の収集・分析は計画通り実施することができており、現地調査を行った団体も増やすことができた。それらの調査・分析を通じて、決算に基づく地方公会計情報と予算編成との間のリンクとしての機能を果たすものは、個別的な固定資産情報であることは明らかにできた点で研究上の成果が得られている。 また、平成28年度の決算については「統一的な基準」に準拠した財務書類を作成・公表している団体が増加しており、そのうちの多くの財務書類を実際に入手することができた。さらに、本年度の研究活動の中で静岡県市町行財政課との協力関係が確立できたことで、静岡県のほぼすべての団体から情報提供を得ることができる研究体制を整備することもできた。また、市販されている地方の決算指標のデータベースの検討も行うことができ、実証的な調査を実施するためのデータの収集体制は整備できたと考えている。 実証的な調査を行うための仮説についても、研究メンバーによる研究会での検討を重ねている。現地調査を行った団体の財政部門・企画部門の担当者との意見公開を通じて地方公会計情報の中でも資産情報が調査のターゲットとなることは明確になった。資産を将来における負担を予測するための情報として位置付けて、その負担への対応が予算編成に反映されるメカニズムを仮説としてまとめる段階に至っている。仮説をより一般的なものにするためには調査対象の団体を拡張する必要があるが、この点についてはアンケート調査による情報収集を図る方針も決まっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は本研究の最終年度になるため、本研究の目的である実証的な調査を実際に行い、その調査結果を解析する。そのため、以下のようなスケジュールで研究を進める。 まず平成30年6月から7月に、仮説の一般化を図ることも目的とした郵送によるアンケート調査を全地方公共団体に対して実施する。アンケートの調査票の内容は、5月末までにメンバーによる研究会で確定させる。そして8月中にアンケートへの回答の集計を行い、集計結果をメンバーによる研究会で検討したうえで、実証的な調査のための具体的な仮説の設定を行う。そのうえで、10月までに必要なデータを収集・整理する。データの収集にあたっては、学生アルバイトによるWebを通じた資料収集を行うとともに、静岡県市町行財政課や現地調査を行ってきた団体に追加的な情報提供を求める。そして、設定した仮説に基づく実証的な調査を年内に実施し、算定された調査結果の検討と追加的な調査を実施する。最終的には、年度末までに調査結果の成果をメンバーによる共著論文としてまとめる方針である。
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Research Products
(3 results)