2018 Fiscal Year Research-status Report
会計基準の国際統合を見すえた会計教育・研究のための会計理論の再構築
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16K03985
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤井 秀樹 京都大学, 経済学研究科, 教授 (80173392)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | コンバージェンス / 会計基準 / 会計教育 / 会計制度 / 会計理論 / 比較制度分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
第3年度(平成30年度)は,第1~2年度の研究成果を踏まえつつ,研究計画書に記載した研究計画に基づき,会計基準の国際統合を見すえた会計教育・研究のための会計理論の構築に努めた。会計学領域のトップジャーナル3誌(Accounting Review, Journal of Accounting and Economics, Journal of Accounting Research)の2013~2017年の5年間の掲載論文の全数調査の結果,会計研究の最先端は論理実証主義的手法の洗練を競うピースミールエンジニアリングの傾向をさらに一層強めつつあることが,改めて確認できた。そうした研究は,ノーマルサイエンスとしての会計研究の発展には貢献するが,会計基準の国際統合に対応した制度の教育・研究には関心を払っていない。しかし,会計教育・研究に対する一般社会のニーズは,むしろ後者において大きい。先端的会計研究の発展に対するニーズと会計基準の国際統合に対応した制度教育・研究に対するニーズが国内外において併存し,その乖離が今日さらに拡大しつつある。 実証主義的会計研究の隆盛を会計に関わる重要な社会現象の1つとして措定しその根拠を説明すること,実証主義的会計研究によって報告された知見を与件として取り込み会計制度変化を説明することで,理論と実証の対話(ただし必ずしも相互連携ではない)が可能となり,会計教育・研究のための新しい会計理論を開発することができる。 以上の研究と並行して,会計制度変化に関する応用研究として非営利組織会計制度の研究を引き続き行った。その結果,非営利組織会計は「企業会計との同型化」をさらに強める方向で発展しつつあることが明らかになった。国内における象徴的な動向として,日本公認会計士協会非営利組織会計検討会による非営利組織モデル会計基準(案)の開発をあげることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べた研究成果の一部を,2件の雑誌論文「会計はアートか科学か―会計の科学性を問う意味―」(『會計』第194巻第5号,2018年11月,1-15頁),「会計における理論の本質と役割―会計理論とは何であり,何でありうるか―」『会計理論学会年報』(No.33,2019年,印刷中),1件の図書『入門財務会計(第3版)』(中央経済社,2019年),3件の招待講演「会計はアートか科学か―会計研究の現状と課題―」(早稲田大学会計研究所春季セミナー,早稲田大学,2018年7月14日),「会計理論とは何であり,何でありうるか―理論承認から現在まで―」(会計理論学会第33回大会,神戸学院大学,2018年10月6~7日),「会計基準の国際統合と会計の制度性」(産業経理協会月例講演会,経団連会館,2018年10月12日)として,発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題に係る研究成果の国際的な拡張を予定している。具体的には,長年にわたって研究交流や共同研究を行ってきたJacques Richard氏(University Paris-Dauphine名誉教授)と,本研究成果を基にした研究交流を行い,大陸型会計制度の歴史を持つフランスの経験に照らして,研究成果の国際化を図る。可能な場合には,その成果を国際的なジャーナル等で公表する。
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Causes of Carryover |
会計基準の国際統合がわが国の民間非営利組織の活動や財務報告にどのような影響を及ぼすかを,欧米の事例を参照しながら,調査してきた。その過程で,フィールド調査によって得られると期待されるエビデンスを追加すると,より完成度の高い研究成果が得られることが分かった。次年度(令和元年度)の前半までにその調査を行い,研究成果は,9月15~16日に久留米大学(福岡県)で開催される非営利法人研究学会第23回全国大会で報告する。
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