2019 Fiscal Year Annual Research Report
New Accounting Theory for Education and Research in the Ara of International Convergence of Accounting Standards
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16K03985
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤井 秀樹 京都大学, 経済学研究科, 教授 (80173392)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | コンバージェンス / 会計基準 / 会計教育 / 会計制度 / 会計理論 / 比較制度分析 / 非営利組織会計 |
Outline of Annual Research Achievements |
第4年度(2019年度)は,個別事例研究として,日本公認会計士協会(JICPA)が2019年7月に公表した非営利組織モデル会計基準(以下「モデル会計基準」)を素材にして,会計基準の国際統合がもたらす会計制度変化の現代的特徴の一端を明らかにした。 得られた主な知見は以下の通りである。(1)非営利組織会計基準の共通化のパターンを企業会計基準との関係に照らして整理すると,一部基準共有型(FASB基準),セクター横断型(英国チャリティーSORP),独立基準型(モデル会計基準)の3つに類型化できる。独立基準型は,会計基準の体系性と一覧性の点で比較優位性を持つ。JICPAはこの点を重視している。(2)非営利組織は一般に収益の主要な一部を非交換取引(寄附や補助等)によって得ることから,収益認識基準を収益費用アプローチ(実現基準)に依拠して設計することが困難である。その結果,モデル会計基準では,IFRS第15号と極めて類似した収益認識基準が提案されている。独自の背景を持つものであるが,非営利組織会計基準のあり方が,会計基準の国際統合の展開と無関係ではないことが,示唆されている。(3)非営利組織の資産の主要な一部は,対価を伴わないサービス提供活動に利用されるため,当該資産は営利企業における資産の定義(キャッシュフローを生み出す経済的資源という特性)を満たさない。そのため,サービス提供能力を基礎概念とした資産の再定義が必要であり,その管理運用の適正性(受託責任の履行状況)を財務諸表において報告するために,純資産の区分表示が必要となる。 細部には非営利組織会計の独自性が観察されるが,収益認識基準に象徴されるように,その制度変化は総じて企業会計との「同型化」(isomorphism)として特徴づけることができる。
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