2017 Fiscal Year Research-status Report
株主優待制度がコーポレート・ガバナンスと利益マネジメントに与える影響に関する分析
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16K03988
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
松浦 良行 山口大学, 大学院技術経営研究科, 教授 (70274149)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 株主優待 / コーポレートガバナンス / 利益マネジメント |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本特有の株主優待制度に着目し、コーポレートガバナンスに係る株主優待提供決定要因と会計行動に与えるインパクトについて検証することを目的とする。 この目的実現に向けて、本年度は独立変数としてのコーポレートガバナンスと、従属変数樽利益マネジメントの操作化に係る研究活動を実施した。 このために特に重視したのは株主優待企業に対するヒアリングである。複数社へのヒアリングを通じて、経営者のバックグラウンドや、業種によって株主優待に対して異なる優待目的を有していることを確認した。さらに、こうした違いは、優待品目の選定においても影響を与えている可能性も確認できた。そこで、こうした経営者の株主との関係構築におけるこうした定性的要因を変数化するために、さらなる文献レビューと関連するデータセットの構築を行った。これらに加えて、株主優待制度によって潜在的に不利益を被る可能性のある機関投資家株主が、なぜ当該制度を許容するかについて検討するために、当該株主層の特徴をより詳細に表現するためのデータセットの構築を行った。 株主優待制度は、経営者の我が国個人投資家の嗜好に関する一定の認識が前提となっている。したがって、株主優待がこれら個人投資家の銘柄選択行動に我が国固有の影響を与えているかどうかを知ることが、重要なガバナンス要素の一つである経営者の意識の潜在変数となるため、その解明を行うことが検証モデルの精緻化につながる。こうした観点から、本研究を精緻化する派生的研究として、筆者が過去の科研費研究で実施した我が国個人投資家の株主優待選好度に関する調査と比較するために、株主優待に対して事前知識を有しないインドネシアにおいて同様の実験を行い、我が国個人投資家の特徴を検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究成果の海外、特に東南アジアへの展開を念頭におき、昨年度はインドネシアの研究パートナーとの連携に時間を要したが、本年度は当初予定していたデータベース構築についても予定通り進行しており、海外の学術雑誌への投稿に向けてさらなるデータ分析や検証をおこないつつ論文執筆を行っている。 これらに加えて、株主優待普及の背後にある投資家の特徴を含めた我が国証券市場の特徴をより明らかにし、ガバナンスの特徴を表現するための合成変数作成の一助とすべく、インドネシアの投資家を対象として株主優待の投資意思決定に与える影響を調査した。ガバナンス体制が優待に影響を及ぼすに当たり、経営者の投資家の嗜好に関する認識バイアスが介在しているため、そもそも日本の個人投資家の嗜好にはどのような傾向があるのかを把握することが必要であると考えたためである。このため、筆者が以前受託した科研費研究の結果と、株主優待について予備知識を持たない被検者の反応結果を比較照合することで、より合理的なガバナンス変数の構築につながると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に記載した研究課題については、検証モデルに係る試行錯誤に伴うデータセットの構築に若干の遅れがある以外に、おおむね記載通りの方法で推進しているところである。ただし、上記に述べたとおり当初予定以上の研究活動を実施可能となったため、それら派生的な研究成果の公表に向けてのさらなる検証等のために、来年度学会発表のための予算として計上していた予算の一部を研究補助員等の費用に充てる。なお、筆者所属の部局が契約していた財務データベースの契約が本年で終了したため、追加的なデータ入手が必要となった際は、インドネシアのパートナーを経由して入手せざるを得ないため、来年度もその業務委託契約を実施する。ただし、この金額は軽微である。 学会発表等による研究成果の公表については、パートナーである研究者を共著者に加えることで、彼らが自らの研究資金で実施することとなっている。したがって、筆者自身の研究発表を削減することによる影響はないと考えている。
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Causes of Carryover |
当該年度において予定していたインドネシアにおける個人投資家を対象とした実験にかかる委託業務費が当初予定していた金額よりも安価で実施できたため、次年度において上記にかかる頑健性検証のための追加的実験を実施するための委託業務費と仮説検証のための分析作業に研究補助員を雇用することに充てる。
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Research Products
(1 results)