2018 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of the effect of shareholder perks on corporate governance and earnings management
Project/Area Number |
16K03988
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
松浦 良行 山口大学, 大学院技術経営研究科, 教授 (70274149)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 株主優待 / 利益マネジメント / 所有者構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、我が国に特徴的な株主優待という制度に着目し、日本におけるコーポレート・ガバナンスと利益マネジメントの関係について新たな知見を提供することを目指した。本年度は最終年度であり、株主優待、ガバナンス、利益マネジメントの関係に関する統合的な検証を行うことを目指した。 一般的に財務数値に関する解釈能力を有しない個人投資家が機関投資家や銀行にとって代わって安定株主となる場合、先行文献で明らかにされている機関投資家が提供するような規律効果はなくなり、経営者はより自らの利害にそった経営を行うためによりアグレッシブな利益マネジメント行動をとる、という見方ができる。この場合、株主優待の費用は、それを実現するためのコストであると考えることができる(エントレンチメント強化仮説)。一方で、財務数値の解釈力が低い個人投資家が安定株主となるのであれば、経営者はあえて利益マネジメントを実施して自社の状態を望ましく見せる必要がないため、積極的な会計マネジメントを行わないという見方もできる(ディバージョン仮説)。株主優待の費用は短期的な会計数値に必要以上にこだわらないで経営するためのボンディング費用ととらえることができる。 この対立仮説を中心として分析を行った結果、ディバージョン仮説が支持され、株主優待は利益マネジメント、特に実体的利益マネジメントにたいして有意な負の影響を有することが明らかになった。したがって、株主公平性の問題を別にすれば、株主優待の導入によって企業、ひいては相対的に株主優待について優遇されていない大株主は一定のコスト負担をすることになるが、そのコストを支払うことによって企業の利益マネジメントを抑止する効果がある可能性が示された。
|