2017 Fiscal Year Research-status Report
管理会計システム導入にみる会計ルーティンの移転と制度化に関する研究
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16K03991
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
庵谷 治男 長崎大学, 経済学部, 准教授 (20548721)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 会計ルーティン / 管理会計システム導入 / 制度論 / ケース・スタディ / 知識移転 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の研究目的は管理会計システム(Management Accounting Systems: 以下,MAS)の導入プロセスにおいて,会計ルーティンが組織間でどのように移転し制度化されるかをケース・スタディに基づいて解明することである。 研究実施計画に基づき,平成29年度はリサーチ・サイトの選定と聞き取り調査を実施した。具体的には,アメーバ経営のMASを導入・実践している非製造業A社である。A社は既にアメーバ経営のMASを導入して約5年が経過するが,導入からまだ日が浅いため,本研究の目的にある会計ルーティンの移転を観察可能と考え,リサーチ・サイトとして妥当であると判断している。2017年10月21日にA社のX工場を訪問し,同社の経営管理部門の責任者よりアメーバ経営の導入経緯,導入状況について聞き取りを行った。調査の結果,同社では「時間当り採算」について独自の設計・運用がみられた。換言すれば,会計ルーティンを移転する際に,自社の事業特性に合わせて修正している可能性が考えられる。また2017年2月に,研究代表者が同社の社長による講演会に参加し,トップがアメーバ経営のMASをどのように展開しているのかについて,直接意見を伺う機会を得ている。 本研究の公表機会として,研究代表者は2017年7月5日に博士学位申請論文「アメーバ経営導入にみる管理会計システムの多様性:事業特性差異に基づく探索的事例研究」(博士(商学)早稲田大学)を提出した。また,博士論文を加筆修正し,書籍『事例研究 アメーバ経営と管理会計』(中央経済社,2018年3月)として上梓している。くわえて,「アメーバ経営導入研究にみる管理会計システムの設計と運用」と題して,日本原価計算研究学会第43回全国大会(2017年9月11日, 関西大学)にて学会発表をしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度(平成28年度)は,研究代表者の博士学位申請論文執筆という機会が急遽生じたため,研究の進捗度が「やや遅れている」状況であった。その遅れを挽回するべく,本年度は博士学位取得後の7月以降,精力的に研究活動に専念した。その結果,リサーチ・サイトとしてアメーバ経営を導入・実践している非製造業A社に調査協力を得ることが可能となった。さらに,A社に対して第1回目の調査を行い,A社のアメーバ経営のMASの実態と,独自の会計ルーティンを確認することが可能となった。A社ではアメーバ経営を導入する際に,自社の事業特性に鑑み,会計ルーティンを京セラと同様に移転するのではなく,独自に創発している可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,研究計画に従い,引き続き調査を継続する予定である。また,既に得たデータの整理を進めていく。また,本研究のキーワードにもある「知識移転」について先行研究のレビューおよび整理を継続する。既に,国際経営の分野を中心に「知識移転」のレビューを実施している。とくに「知識移転」と大きな課題となる組織内の抵抗(障害)について,さらに理解を深めるべく渉猟を行う予定である。 成果の公表機会として,2018年10月に早稲田大学で開催予定のAsia-Pacific Management Accounting Association 2018 coferenceにて本研究の成果の一部を発表する計画である。本学会での発表経験はないが,アジアを中心とした国内外の管理会計研究者が一堂に会する場であり,積極的にチャレンジしていく。ただし,リサーチ・サイトへの聞き取り調査の進捗状況によって,別の国内外の学会・研究会での発表も視野に入れながら,柔軟に対応していく考えである。
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Causes of Carryover |
当初,2018年3月に旅費で当該金額を使用予定であったが,研究代表者の家族が体調不良となり,急遽看病のため出張を取りやめることとなった。当該出張については,既に2018年4月に新たに出張予定が立てられたため,平成30年度中に執行の予定が決まっている。
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Remarks |
庵谷治男「アメーバ経営導入にみる管理会計システムの多様性―事業特性差異に基づく探索的事例研究」『博士学位申請論文』早稲田大学, 2017年7月, pp.1-247(公表を予定している).
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