2018 Fiscal Year Research-status Report
組織内多様性と経営者属性の多様性の拡大が租税負担削減行動に与える影響
Project/Area Number |
16K04006
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
大沼 宏 東京理科大学, 経営学部経営学科, 教授 (00292079)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 連結納税制度 / 租税負担削減行動 / 自信過剰 / 投資リスク / コーポレートガバナンス / 社外取締役 / 機関投資家 / コーポレートガバナンススコア |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は主に2つの論点に絞って研究を進めた。第1点は連結納税制度と租税負担削減行動との関連性について。第2点は経営者の自信過剰という経営者属性と租税負担削減行動との関連性についてである。第1点については、連結納税制度の導入する企業をEOLという有価証券報告書や四半期報告書、適時開示資料を包括的にダウンロード可能なデータベースからピックアップし、その企業群のガバナンス的側面からの特徴を調査した。分析によって機関投資家の持ち株数と社外取締役の人数と連結納税制度の採用とに有意な関連性が存在することが示された。 第2点である経営者の自信過剰と租税負担削減行動との関係性についての調査からは、経営者の投資に対する積極性が租税負担削減行動とプラスに関係することが明らかになった。というのも、自信過剰な経営者は、ある意味で自分の行動を客観的に把握することを苦手とする。その一方で、自信過剰な経営者はリスクの伴う経営行動こそが企業価値を増加させるものと認識する傾向も強い。このことから、租税負担削減行動のような調査リスク、追徴リスク、追加負担発生リスクの高い経営意思決定を下すことのできる経営者は自分を客観的に評価することが出来ていないと判断できる。分析によって自信過剰な経営者は租税負担削減行動を積極的に引き受けることが出来る可能性が高いことが明確になった。さらに自信過剰な経営者の経営行動に歯止めをかけるのは、社外取締役からの圧力である可能性が高いことも示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画は具体的な経営者属性を十分に明示していたとは言えない。しかし、分析を進めていく中で、租税負担削減行動に影響を及ぼす経営者属性はナルシシズムのような自己顕示欲は考えにくいという思いに至った。むしろ経営行動全般に影響を与える属性は、心理的な衝動であり、固有の形質であろうと考える。この知見に本年度は接近したと考える。それ故、現在までの進捗状況は上記区分に至ったものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度に租税負担削減行動に影響を及ぼす経営者属性として自信過剰というキーワードに至った。今後はこの研究上の経路を大事にしつつ、より一般的な方向へ拡張させていきたい。経営者の自信過剰と租税負担削減行動の関連性を明らかにすることを一つの目標に設定する。さらに経営者が自信過剰に何故なるのかを明らかにしつつ、そうした心理的な変革が租税負担削減行動のようなハイリスクな経営行動にどういった因果系譜で至るかについても明確にしてたい。
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Causes of Carryover |
研究代表者である大沼が2018年度一杯で東京理科大学から中央大学へ異動したため、そのための諸事に時間が当てられ予定していたほど研究が進まなかったため。結果として次年度使用額が生じた。 2019年度には遅れていた租税負担削減行動と経営者属性との関係性に関する研究論文が完成予定であり、この研究を海外の学会において報告する計画もある。予定を消化していく中で予定していた資金を利用する予定である。
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