2019 Fiscal Year Research-status Report
組織内多様性と経営者属性の多様性の拡大が租税負担削減行動に与える影響
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16K04006
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
大沼 宏 中央大学, 商学部, 教授 (00292079)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 経営者の自信過剰 / コーポレート・ガバナンス / 取締役会 / 高いリスク志向 / 経営者の性格的特徴 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成31年度・令和元年度(2019年度)は研究計画に沿って、コーポレート・ガバナンス(corporate governance:CG) の強弱と取締役会のパーソナル・ヒストリーとの間に一定の関係があるかを分析することにしていた。ただ、2019年4月から所属先が変わっていたこともあり、利用できるデータベースが大きく変容してしまった。このため、前任校では利用できていた上場企業の役員情報データベースが、異動先の大学では利用できず、結果として経営者のパーソナル・ヒストリーのデータとCGとの関係、この関係をベースとして税負担削減行動に与える影響についての調査も頓挫してしまった、 その一方で、2018年から大学院生の石黒氏の協力を得て、CEO(最高執行責任者)の性格的特徴とCGの関係について分析を進めた。その成果は日本ディスクロージャー研究学会(現:日本経済会計学会)において2018年度に学会報告を行ったものの、そこから経営者の性格的特徴として「自信過剰」に焦点を絞り、更に経営者の自信過剰と企業の税負担削減行動との関係について分析対象を広げて検証を進めた。これまでの研究計画は、Chatterjee and Hambrick(2007)において指摘されるような利己主義的性格がどうCGに影響を及ぼすかを中心に据えてきた。ここからはChyz, Gaertner, Kausarand Watson (2018)に倣い、自信過剰な経営者はリスクの高い行動を好むことから税負担削減行動を行うという仮説の検証に切り替え、さらに、自信過剰な経営者による税負担削減行動は、合理的な経営者が行うであろう最適な水準よりも積極的に行う可能性があるという仮説の検証を進めた。分析結果は英文原稿に直し、2020年に海外学会での発表を希望したものの、新型コロナウィルスの蔓延による大会の延期に伴い、計画は中座している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成31年・令和元年(2019年)から、現在の所属先である中央大学へ移動した。教育負荷であったり、業務上の負担は前任校と比較するとかなり軽くなり、研究の進展も相当に期待できたのだが、想定通りに進んでいない。なぜなら前任校とは予算処理の方法、その事務手続きの相違、利用できるデータベースの違い、図書館のシステムの違いなど、事務的なものでの相違は大きく、その障壁を乗り越えるのにやや時間を要しているからである。とはいえ、この遅れは一時的なもので、早急に取り戻すことは可能と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では取締役会の性格的属性とCGの関係について検証する必要があった。これを先行研究を基礎として、日本企業と海外企業との差異を検証することも目的としてた。しかし、研究予定期間は2020年度が最終年度であり、1年ですべてを達成するのは難しい。今年度は経営者の自信過剰と租税負担削減行動との関係に研究の焦点を絞り、海外学会や海外ジャーナルへの投稿に向けて、成果のまとめに注力していく予定である。また可能であれば、R&D 投資とCG の状況と租税負担削減行動の3者間関係の解明が当初の計画にあったことから、この領域の分析も深めたいと考える。研究計画の周辺領域の研究として租税負担削減行動とエイジェンシー理論、不完備契約の関係にも拡張できたらと考えている。
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Causes of Carryover |
平成31年・令和元年(2019年)に現在の勤務先に異動したことで、研究環境が大幅に変化したことで研究計画の進展が遅れ、残念ながら研究成果を生むことが出来なかった。当、研究成果を国内学会及び海外学会で報告することも出来ず、結果として次年度使用額が生じてしまった。しかし、今年度は順調であれば2回以上海外学会で報告する予定であり、備品も購入する予定である。これによって研究予算は消化できるものと予想される。
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