2016 Fiscal Year Research-status Report
会計的裁量行動の測定と財務諸表の質を評価するスコアの作成
Project/Area Number |
16K04014
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
奥村 雅史 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (30247241)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 災害の情報開示 / のれん償却 / 注記情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,第Ⅰに,緊急時のディスクロージャーに関する研究として,緊急事態として大震災をとりあげ,これまでに収集した震災直後のディスクロージャー情報について分析した。まず,開示された情報の内容(直接被害,間接被害など)とタイミングを調査したうえで,株式市場全体の反応をイベント・スタディーの手法により検証した。震災の発生により企業業績の不確実性は高まり,実効スプレッドの拡大が見られた。また,開示企業の株価反応は,その情報内容と時期により異なるものであった。大震災直後の1週間は企業の開示が集中していた時期であったが,大震災直後の1週間での開示は,その内容が「被害あり」の場合,即座にマイナスに有意となる反応を示しており,さらに「調査中」の場合は,被害が大きい可能性を懸念して,よりマイナスの影響が強くなっていた。一方,「被害なし」の場合,開示直後では有意ではないが,4日および5日ではプラスに有意となっており,その情報に価値のあることを示す結果となった。 第2に,企業結合におけるのれんの償却に関する会計問題を実証的な観点から検討した。米国の実証研究では,のれんの償却は経済価値の減少を反映せず,その情報が株価形成にとってノイズであるという解釈が多くみられたが,わが国のこれまでの研究結果においてはその解釈は妥当しないことを確認し,新しい解釈としてシグナリング仮説を提示した。具体的には,注記情報におけるのれんの償却費の金額やのれんの償却期間が経営者における買収資金の回収可能性を反映する可能性があるため,償却費が多額であるほど,償却期間が短いほど,将来収益性が高いことをシグナルする可能性があることを示した。これは,経営者の裁量がある程度働くと考えられる償却という会計処理の注記情報が投資意思決定にとって有用である可能性を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
会計的裁量行動の測定のためのモデル開発において利用するデータの整備に予想以上の時間がかかっている。具体的には,開発したモデルの裁量行動検出能力を評価するために会計利益の訂正情報を利用する予定であるが,その収集・整理に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
会計的裁量行動の測定のための複数のモデルを整理し,さらに,シミュレーションを行って検出力の評価をするとともに,利益訂正事例を利用してモデルの特性を検討する。 さらに,スコア作成の基礎資料として,非財務情報を整理するためにテキストマイニングを実施する。とくに,本年度はそのための機材,ソフトウエア等の整備をするとともに,有価証券報告書情報について試験的にテキストマイニングを実施する予定である。
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Causes of Carryover |
評価スコアの作成のために基礎資料としてテキスト情報を利用する。その際にはテキストマイニングの手法を利用する予定であるが,そこでは高性能のコンピュータを利用することによって分析をかなり効率化できることが判明した。具体的には,ワークステーションと呼ばれる機材が必要となり,これを購入するためには当初予定の次年度の直接経費だけでは不足するため,本年度の直接経費を繰越し,次年度分と合わせて購入することにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度の使用残額と当初予定の来年度の直接経費を合わせて,100万円程度のワークステーションを購入する予定である。
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Research Products
(2 results)