2017 Fiscal Year Research-status Report
テンションのマネジメントにおける管理会計情報の有効性に関する理論的・実証的研究
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16K04018
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
近藤 隆史 京都産業大学, 経営学部, 教授 (60336146)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 管理会計 / マネジメント・コントロール / 業績評価 / インターラクション / テンション |
Outline of Annual Research Achievements |
管理会計およびマネジメント・コントロールにおける多様な経営上の目的追求において生じる組織メンバー間のテンションについて,前年度同様に実証分析のために文献研究,さらに理論的な仮説・モデルの構築に専念してきた。大きく成果としては2つに分けて示すことができる。一つは,業績評価における指標の集約の程度とメンバーの協力的な行動に関して,文献レビューを通じて,鍵概念および理論モデルを設定した上で,シミュレーションを通じて,定量データを取得し解析を行った。これについての成果は,日本会計研究学会(全国大会)にて成果報告を行った。具体的には,ネットワーク構造の組織を想定した中で,指標の集約度は,個々のメンバーの作業の進捗は(分解された指標に比べて)遅くなるものの,(利己的な人間モデルを仮定した上でも)協力的な行動が引き出せることが明らかになった。2つ目は,組織の階層関係における,トップ,ミドル,ロワーの三層構造のなかでの,インターラクティブ・コントロールについての文献研究および1と同様の手法を通じて得られたデータをもとに分析を行った。具体的には,多様なパラメーターから,トップのインターラクティブ・コントロールの程度(3つのレベルで設定)とミドルマネジャーの特性(部下からの報告に対してコンサバティブ,イノベーティブ,そしてランダムの3つで操作化)の組み合わせで分析をおこなった。インターラクティブ・コントロールの成果における革新性と統合性の両立が,ある条件のもとで発生することが明らかになった。これについては,原稿を完成させ国際ジャーナルにて投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要にも示したとおり,文献レビューおよび理論モデルの構築を中心に研究を進めてきた。それら一部成果を,学会報告や雑誌投稿という点からこれまでは段階的に成果を出せていると言える。たとえば,理論モデルの構築の際も,文献レビューだけではなく,シミュレーションを通じて,定量データをもとに分析を行い,理論モデルの妥当性の検証と文献レビューからでは発見できない事実を見いだせた点で,非常に有意義であった。これら知見をもとに,今後は,経験的データを入手し,仮説検証を行いと考えている。ただし,昨年10月から日本を一時離れることになり,その間定性的な調査が困難になっているため,その点で当初予定していなかった進捗の遅れもあるものの,現地でも調査先を探したり,全体としては,概ね研究は順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もテンションのマネジメントというテーマを管理会計,マネジメント・コントロールの観点から,文献レビュー,理論モデルの構築,それらの検証を進めていく。テンションという概念は,メンバーのミクロ的な活動と,それが生み出すマクロ的(組織的)な現象の両方の現象を同時的に観察する必要がある。そのため,従来どおりのアンケート調査やヒアリングだけでは,どうしても限界があるため,シミュレーションの手法を取り入れ,理論モデルの検証を試みてきた。更に進めて経験的データで検証すべき仮説などを適正に導き出せると考えている。そのため,今後も,シミュレーションの手法は実施しつつ,理論モデルの精緻化と検証を進めていくことにしている。また,シミュレーション手法は,管理会計,マネジメント・コントロールの分野では国内外でも少ないため,その有用性を示せることは本研究の副産物としても重要である。
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Causes of Carryover |
本学での平成29年10月から一時在外研究が認められたため,国内での研究費の執行を変更する必要がでたために,繰越することにした。また,科研費最終年度でもあり,結果の取りまとめにあたり,関連分野の研究者ら(例えば,専修大学・西居豪教授または小樽商科大学・乙政左吉教授)に意見やコメントを直接求めたり,学会報告などが増えることが予想されることから,旅費などに余裕をみている。
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