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2016 Fiscal Year Research-status Report

アカウンティング・プロフェッションによる監査のガバナンス支援機能に関する研究

Research Project

Project/Area Number 16K04019
Research InstitutionDoshisha University

Principal Investigator

百合野 正博  同志社大学, 商学部, 教授 (20104606)

Project Period (FY) 2016-04-01 – 2019-03-31
Keywordsアカウンタビリティ / アカウンティング・プロフェッション / 投機市場としての証券市場 / 財閥企業のディスクロージャー / 1940年体制
Outline of Annual Research Achievements

公認会計士による民間企業の財務諸表監査は、2001年に発生したアメリカにおけるエンロン事件を契機とした多方面にわたる改革の結果、監査主体が厳格監査を行うための仕組みがブラッシュアップされ、一定の成果を生むようになってきていた。わが国においても、アメリカとほぼ同様だと思われていた。つまり、私が科研費に応募しようとした時点においては、大規模株式会社の財務諸表監査は一定の到達点に達していたと考えうる状況だったのである。そのために、科研費によって遂行したいと考えた研究テーマは、大規模株式会社の財務諸表監査の枠を超えたアカウンティング・プロフェッションによるパブリックセクターの監査およびガバナンス支援機能の理論的・実証的探求、および具体的政策提言であった。
しかしながら、2015年2月に始まった東芝のいわゆる「不適切会計」問題は2016年に入っても一件落着とはならず、日本におけるアカウンティング・プロフェッションによる法定強制監査システムの屋台骨を揺るがしかねない極めて重大な問題であり続けた。(この問題は2017年度に入っても依然として継続中である。)
そのため、2016年度においては、まず「東芝の不適切会計」が象徴しているわが国の財務諸表監査制度が内包する重大な問題点を明らかにするため、目の前の東芝事件の成り行きが示しているファクトとこれまでの私の研究成果とをリンクさせて論点をあぶり出した上で、上述した科研費での研究との連続性を明らかにする単著の執筆に費やした。その結果、2016年12月に単著を出版することができた。さらに、同様の視点に立った監査論の入門書の編著も同時並行的に行い、2017年3月に斬新なテキストを出版した。各出版物は次のとおりである。
百合野正博著『会計監査本質論』森山書店、2016年12月。
百合野正博共編著『はじめてまなぶ監査論』中央経済社、2017年3月。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

4: Progress in research has been delayed.

Reason

研究者の間での共通理解ではないけれども、2015年2月に始まった東芝のいわゆる「不適切会計問題」は、日本におけるアカウンティング・プロフェッションによる法定強制監査システムの屋台骨を揺るがしかねない極めて重大な問題である。その理由は次のとおりである。
後にその第三者性に疑問符が付されることとなる第三者委員会の報告を根拠として「不適切」という用語を東芝が使用したことを根拠として日本経済新聞が一連の東芝をめぐる出来事を報道し続けたこと、および、決算発表を再三延期した上で監査法人を変更し、変更後の監査法人から適正意見をもらえないまま決算発表を行うものの、再度監査法人を変更しようとしている東芝の行動と、経営者の責任を追及せず、上場を廃止せず、ただただ成り行きに任せている監督官庁と証券取引所の態度を私は見過ごすことができなかった。その問題点を明らかにしないまま科研費の研究に取り掛かった場合、問題意識の希薄な研究になってしまうと強く感じたのである。
そのため、2016年度においては、海外における聞取調査を翌年以降に延期することとし、まず東芝事件が象徴しているわが国の財務諸表監査制度が内包する重大な問題点を明らかにすることによって、科研費による研究テーマ、すなわちパブリックセクターの監査およびガバナンス支援機能の理論的・実証的探求の重要性を浮かび上がらせることに注力した。その成果である単著『会計監査本質論』は、江戸時代末から明治・大正・昭和・平成を通して考察できるわが国監査制度上の固有の論点を類書にはないユニークな切り口であぶり出すとともに、今回の科研費による研究の重要性を明らかにした、まさに私の意図を反映した内容になっている。
その反面、時間的余裕がなくなり、結果的には、科研費で行うべき研究の中核としての海外聞取調査を行うことができなかった。そのため、評価は、「遅れている」とした。

Strategy for Future Research Activity

2016年度に実施する予定であった海外聞取調査を延期したため、2017年度は、まずアメリカでの聞取調査を次のスケジュールで実施する。
調査期間 8月17日(木)~23日(水)
調査対象 KPMG(大手国際会計事務所)ニューヨーク本部、AICPA(米国公認会計士協会)ニューヨーク本部、PwC Florham Park(大手国際会計事務所米国品質管理本部)、PCAOB(米国後悔企業会計監視委員会)
さらに、秋学期中もしくは春休みに、2016年度に実施する予定であったもう一つの海外聞取調査対象国であるイギリスにおける調査と、2017年度に実施する予定であった海外聞取調査対象国であるイタリアにおける調査を実施することによって、パブリックセクターの情報公開の実態とその仕組みにおいて各国のアカウンティング・プロフェッションが果たしている役割とを明らかにするための考察を行う。そして、当初の研究計画からの遅れを取り戻す。

Causes of Carryover

2016年度に実施する予定であった海外聞取調査を延期したため、ちょうどその費用に見合う金額が次年度使用額となってしまった。
延期の理由は、次のとおりである。すなわち、監査論の領域では極めて重要な問題を内包していると考えられる東芝事件の象徴するわが国の財務諸表監査制度が内包する重大な問題点を明らかにすることによって、今回の科研費による研究テーマ、すなわちアカウンティング・プロフェッションによるパブリックセクターの監査およびガバナンス支援機能の理論的・実証的探求の重要性を浮かび上がらせることができると考えたからである。その成果である単著『会計監査本質論』は、江戸時代末から明治・大正・昭和・平成を通して考察できるわが国監査制度上の固有の論点を類書にはないユニークな切り口であぶり出すとともに、今回の科研費による研究の重要性を明らかにした。次年度使用額は生じたものの、一定の成果を得ることができた。

Expenditure Plan for Carryover Budget

2017年度は、まずアメリカでの聞取調査を次のスケジュールで実施する。予算的には、次年度使用額に見合う金額となっている。
調査期間 2017年8月17日(木)~23日(水)、訪問機関 KPMG(大手国際会計事務所)ニューヨーク本部、AICPA(米国公認会計士協会)ニューヨーク本部、PwC Florham Park(大手国際会計事務所米国品質管理本部)、PCAOB(米国後悔企業会計監視委員会)

  • Research Products

    (1 results)

All 2016

All Book (1 results)

  • [Book] 会計監査本質論2016

    • Author(s)
      百合野正博
    • Total Pages
      318
    • Publisher
      森山書店

URL: 

Published: 2018-01-16  

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