2017 Fiscal Year Research-status Report
予算スラックが組織パフォーマンスに及ぼす影響に関する研究
Project/Area Number |
16K04020
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
李 建 追手門学院大学, 経営学部, 教授 (10298680)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 予算スラック / 組織パフォーマンス / 組織文化 / 経営戦略 / 予算参加 |
Outline of Annual Research Achievements |
予算編成にマネジャーを参加させることにより、マネジャーの予算目標に対するコミットメントとモチベーションを高めることができる反面、予算参加によって編成される予算には予算スラックが組み込まれる可能性が高まる。これまで、予算スラックの形成行動を説明すべく多くの関連研究が行われてきたが、調査方法や調査対象の相違などのため、一貫した結論が得られるまでには至っていない。しかし、予算スラックの形成に何らかの影響を及ぼす要因はかなりの程度特定できている。ただ、これまでの研究の大部分が、予算スラックを非効率的なものと見なす、予算スラックに関する1つ目の見解を暗黙的に仮定しており、予算スラックのポジティブな側面に注目した2つ目の見解を支持する研究は数少ない。さらに、予算スラックの最適レベルの存在を想定する3つ目の見解を取り入れた研究はさらに限られている(Yang et al., 2009)。 予算スラックに関する2つ目の見解は、予算スラックが環境変化に対するバッファーとして、あるいは革新的行動を促す資源として機能するというものであった。そのため、予算スラックが組織パフォーマンスに及ぼす影響は、経営戦略や組織文化(革新志向か否か)、あるいは環境の不確実性(環境変化に対するバッファーの必要性が高いか否か)などによって影響されることが考えられる。これらのモデレータ変数を考慮しつつ、予算スラックがどのように組織パフォーマンスに影響を及ぼすのかを検証していかなければならない。このような観点から、経営戦略や組織文化と組織スラックとの関係に注目した文献を中心に広範なレビューを行い、経営戦略や組織文化が予算スラックと組織パフォーマンスとの関係に及ぼす影響について理解を深めることができた。今後、予算スラックが組織パフォーマンスに及ぼす影響が経営戦略や組織文化によってモデレートされるプロセスを明らかにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予算スラック研究および経営戦略・組織文化に関する広範な文献レビューから、これまでの予算スラック研究では、予算スラックを組織にとって望ましくないものと見なし、それをどのように削減していくかに主な焦点が置かれていた反面、予算スラックが必ずしも組織パフォーマンスにとってネガティブな要因ではないこと、予算スラックを許容することで、マネジャーに予算目標以外の複数の目標の達成を促すポジティブな効果があることも確認することができた。また、予算スラックと組織パフォーマンスの間には逆U字型の関係があるという仮説も導かれ、具体的に、どのような状況のもとで予算スラックが組織パフォーマンスにポジティブな影響、あるいはネガティブな影響を及ぼすのかについて解明していく必要があることが示された。関連文献のレビュー、ならびに海外の共同研究者との打ち合わせ等を通じ、研究計画はほぼ順調に遂行された。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、予算スラックが組織パフォーマンスに及ぼす影響が経営戦略や組織文化によってモデレートされるプロセスを明らかにしたいと考えている。予算スラックが組織パフォーマンスに及ぼす影響に関する競合する仮説の検証を通じ、経営戦略や組織文化が予算スラックの組織パフォーマンスへの影響をモデレートするプロセスを明らかにすることで、どのような経営戦略や組織文化の下で、予算スラックが組織パフォーマンスにポジティブな影響を及ぼすのか、あるいはネガティブな影響を及ぼすのかを明確にし、予算スラックが組織パフォーマンスに対してポジティブに働くための経営戦略や組織文化のあり方を導き出したいと考えている。学会発表を通して研究成果の社会への公表を図るとともに、各分野の研究者より多様な意見聴取を行い、研究のさらなる進展を図りたい。
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Causes of Carryover |
先方の共同研究者の都合により、海外出張による研究の打ち合わせが十分行えなかった。次年度は、海外研究者との研究の打ち合わせに十分な時間を割くことにしており、それに伴い多くの海外出張費の使用が見込まれる。
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