2018 Fiscal Year Research-status Report
予算スラックが組織パフォーマンスに及ぼす影響に関する研究
Project/Area Number |
16K04020
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
李 建 追手門学院大学, 経営学部, 教授 (10298680)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 予算スラック / 組織パフォーマンス / 予算参加 / 組織文化 / 経営戦略 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、予算スラックが組織パフォーマンスに及ぼす影響を検証することを研究の目的としている。予算スラックが組織パフォーマンスに及ぼす影響については、正の影響と負の影響を含む3つの見解が示されている。そのうち、3つ目の見解はその他2つの見解を取り込んだ統合的な見方であり、予算スラックと組織パフォーマンスの関係を逆U字型として捉えている。一方、予算スラックの除去にかかるコストと予算スラックが存在することによって発生する非効率性のコスト間のトレードオフ関係に注目し、2つのコストを合わせたトータル・コスト曲線(U字型)を導き、トータル・コストが最小となるような予算スラックの許容レベルを模索するアプローチも見受けられる。そこで、本研究では、予算スラックと組織パフォーマンス間の逆U字型の関係を仮定するグラフと、予算スラックとトータル・コスト間のU字型の関係を仮定するグラフを重ね合わせ、2つの曲線の位置関係によって異なるいくつかのケースを導き、各々における予算スラックの最適レベルの検討を行った。日本企業については、これまで予算スラックが少ないことが特徴とされてきたが、予算スラックに最適レベルがあることを踏まえると、日本企業の持つ予算スラックの水準は最適レベルではない可能性が高いといえる。そのような場合、低水準にとどまる日本企業の予算スラックをいかに最適レベルにまで高めていくかが新たな課題となりうる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
多くの学内業務に加え、海外の研究協力者との打ち合わせがスムーズに進まなかったことなどにより当該研究はやや遅れている。これまでの研究においては、予算スラックのポジティブな側面にも注目することで、予算スラックと組織パフォーマンス間の関係は逆U字型のグラフで表すことができることを示した。さらに、この逆U字型のグラフと、予算スラックとトータル・コスト間のU字型の関係を仮定するグラフを重ね合わせ、2つの曲線の位置関係によって異なるいくつかのケースを導くことで、予算スラックの最適レベルはケースによって異なることも明らかにした。また、本研究の課題として、予算編成と予算達成に責任を持つマネジャーのパーソナリティ要因の影響を検討すること、予算スラックと組織パフォーマンス間の関係をモデレートする経営戦略や組織文化の影響を研究フレームワークに含めること、客観的な予算スラックの測定尺度を開発し検証すること、などを示した。引き続き、予算スラックが組織パフォーマンスに及ぼす影響についてより深く分析していくことにしている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究活動から、当該研究を深めていくためのいくつかの課題が示された。まず、狭義の予算スラックに加え、負のスラックをも分析に含める必要があることである。負のスラックの源泉の1つに、チャレンジ欲求ないし達成欲求があるが、このようなパーソナリティ要因の影響を検討することで研究モデルの説明力が高まることが期待される。次に、予算スラックが組織パフォーマンスに及ぼす影響を分析する際に、モデレータ変数として経営戦略や企業文化の影響を検討する必要がある。また、本研究によって明らかとなった予算スラックの最適レベルの存在を念頭に、予算スラックの少ない日本企業においては現状の予算スラックが最適レベルではない可能性が高いことを示し、予算スラックを最適レベルまで作り込んでいくための方策についても検討したいと考えている。さらに、客観的な測定尺度を開発すること、および開発された測定尺度の妥当性を検証することも課題である。客観的で妥当性の高い予算スラックの測定尺度が開発されれば、予算参加→予算スラック→組織パフォーマンスの因果関係が統合的なフレームワークの中で分析できる基盤が整うことになり、一層の研究の進展が期待できるからである。今後の研究においては、これらの課題の遂行可能性を検討することにしている。
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Causes of Carryover |
当該研究は当初の計画よりやや遅れており、その分、当該年度の使用額が次年度に繰り越されることとなった。これが次年度使用額が生じた理由である。使用計画については、当該年度に予定していた国内・海外学会への出張旅費としての使用を計画している。
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