2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K04025
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
紺野 卓 日本大学, 商学部, 准教授 (50581443)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 住民監査請求 / 住民訴訟 / 監査委員 / 株主代表訴訟 / 監査役 / 不提訴理由通知書 / 地方自治法 / 会社法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はこれまでに刊行された文献の検討を通じて、「住民監査請求制度の有効性確保についての研究」を遂行した。しかしながら地方自治法だけの研究では説得性に欠ける部分もでてくるため、他法律の検討、特に会社法を参考として、株式会社における監査役の責任を研究の対象とすることで、地方公共団体における監査委員の役割、およびその法的責任について、新たな視点から考察を加えた。ここでは、地方公共団体と住民の関係と、株式会社と株主の関係が、パラレルな関係として比較可能であることを示したうえで、住民監査請求および住民訴訟と、株主代表訴訟とを比較することで、地方公共団体の監査委員と株式会社の監査役の果たすべき役割および法的責任を比較検討した。この検討により、会社法で規定する「不提訴理由通知書」は、株主にとって有用性の高い資料となりうることが明らかとなった。また「不提訴理由通知書」は、提訴請求対象の取締役の責任の有無について、あるいは責任があると判断されたにも関わらず提訴しないと決定した理由などが示されるだけでなく、監査役が実効性を伴った監査を実施したのか否か、について示される可能性が高いことも同時に判明した。この有用性に鑑み、地方自治法でも会社法における「不提訴理由通知書」に該当する文書の法定化が求められると考える。またこれにより住民監査請求の有効性が向上する可能性が高まるものと理解できる。研究の結果得られた上記主張は、日本監査研究学会第39回全国大会(平成28年9月8日~10日:西南学院大学)において、「(自由論題)住民監査請求の違法な却下処分の法律的対応についての検討―株主代表訴訟との比較を通じて」と題して学会発表を行うとともに、学会誌にも掲載した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定した文献研究、および他法律(ここでは会社法)の比較等については順調に進んでいる。しかしながら、住民訴訟に関する裁判例の収集活動、および会計検査院の検査手法を学術的に探る活動は若干遅れているため、この点については平成29年度にキャッチアップする予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度以降は、これまで対象としてこなかった外部監査の有効性の研究についても範囲を広げる予定である。特に、株式会社においてみられるように、監査役と外部監査人との連携が、地方公共団体における監査委員と外部監査においても適用可能なのかどうか、また適用可能であるならばどの範囲までの連携が適正であるのか等について検討を加えることを予定している。また住民訴訟の裁判例の収集が遅れているため、同作業も鋭意進めていくことを予定している。
|
Causes of Carryover |
住民訴訟に関わる裁判例の収集や、これに関する文献研究が遅れたこと、また同様に会計検査院に関する監査手法の研究が遅れていることにより、当該関連書籍等を購入しなかったことが主な理由である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の遅れている研究内容については、平成29年度以降で実施を予定しているため、前年度未使用額については、予定の通りに使用することを計画している。
|
Research Products
(2 results)