2017 Fiscal Year Research-status Report
初等・中等教育における「自然(現象)の科学的理解」の相互行為分析
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16K04037
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Research Institution | Aomori University |
Principal Investigator |
中村 和生 青森大学, 社会学部, 准教授 (70584879)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
五十嵐 素子 北海学園大学, 法学部, 准教授 (70413292)
水川 喜文 北星学園大学, 社会福祉学部, 教授 (20299738)
東 徹 弘前大学, 教育学部, 教授 (30132939)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 知識の組織化への焦点化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、初等・中等教育における相互行為場面の実践を研究対象とし、「自然(現象)」の「科学的理解」がどのように学習されるのかをエスノメソドロジーの分析技法によって解明することを目的とし、関連研究領域の先行研究の整理と、科学教育の場面のビデオ録画の受け入れ先の再確保、それらの十全な遂行のため3名の研究分担者の獲得という1年目の研究実施を受け、2年目の計画は、主として、少ないながらも許可の降りた、科学教育の場面のビデオ録画の実施とそのデータ編集であった。以下が、データ不足のため部分的に縮小、変更しつつ行った研究の実績である。 第一に、本研究の前提となる予備的作業として、本研究のような科学実践のエスノメソドロジー研究が原初的な相互行為の解明を目指す点で、M.リンチの提唱するポスト分析的エスノメソドロジーに位置づけられることを確認した。第二に、初等教育・中等教育の理科における実験が含まれた授業を、複数のビデオカメラによって録音・録画し、その一部をトランスクリプト化した。第三に、録音・録画された授業の担当教員との共同研究を行う中で、上記のような複数の生徒の共同作業から成る理科実験においては、対象についての課題の答えにたどり着くには、対象やその発生条件を限定していく近代科学的なやり方が不可欠であり、その際、実験の記述にとって間主観的なキーワードが役立つこと、実験結果の正しい解釈にたどり着くには、いくつかの考え方を比較対照させることが有効である、という知識産出の組織化に関する知見を見い出した。第四に、初等教育・中等教育の理科実験が上記のように、複数の生徒の共同作業から成ることに関連して、共同作業のあり方がどの程度指定されているかに応じて学習内容も変わってくるため、それに応じて教師の生徒への関わり方も変えるべきである、という知見を提出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
すでにラポールが確立されており、かつ、研究の一環として録音・録画の対象となることが一定の条件において、ある程度は予め承諾されている、というようなフィールドを保持している研究分担者の参画により、小学校・中学校それぞれの理科実験を一つづつ録音・録画することができた。そして、続けて、この研究室出身の教諭の小中学校に録音・録画を含めたフィールドワークの受け入れを願い出た。しかしながら、最終的には、昨年度と同様の理由のいずれかのゆえに、どこにも受け入れて頂くことはできなかった。多くの研究時間を割いてしまう結果となってしまった。 これに応じ、初等教育、中等教育それぞれほぼ唯一の録音・録画データだけを使って、本研究テーマにおける論文作成までが可能となるように、データとトランスクリプトを繰り返し見て分析上問うに値する論点を探さなければならなくなった。これに想定外の研究時間を割いてしまったため、研究分担者の貢献により若干の成果をあげたものの、中心テーマにおける論点の追求やデータ編集などに遅れが生じてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
録音・録画された理科実験の授業を素材として、自然現象の科学的理解の実践的達成を記述的に解明すること、ならびに、この録音・録画とその書き起こし(トランスクリプト)を用いて、科学的理解の形式の少なくとも一つを取り出すことが本研究課題の目標である。 今後の推進方策としては、先ずは、同一場面の複数データの同期編集を後回しにして、論文作成に多くの研究時間を当てることである。個々の録音・録画データは受け入れ先のフィールドに提供済みであり、これによる問題の発生はまず考えにくい。 つづいて、いくつかの論点を比較考量する中で、論文の構成を検討していく。その際、本研究の遂行者4名を一時的に2つに分けて、意見交換をしつつも、それぞれのペアごとに草稿を作成し、草稿が上がり次第、今度は他の2名がリライト作業を行った上で、元の2名に再度戻す、という方式で進めていきたい。これにより、各々の執筆作業の遅延を防ぎ、最終年度中の論文投稿に何とかこぎつけたい。
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Causes of Carryover |
昨年度より述べてきたように、録音・録画を含めたフィールドワークの受け入れ先として予定していた小学校が受け入れ困難となったことに応じて、録音・録画の行えるフィールドの開拓が急務となり、1年目に実施が計画されていた研究内容を縮小した上で、これに多くの研究時間を捧げざるをえなくなった。 これに伴い、録音・録画・編集に必要な諸経費の使用が延期された。具体的には、映像編集ソフトの購入、調査協力者への通信費などである。また、調査地の変更と研究会への参加回数の減少、並びに図書などの購入の延期に伴い、旅費分と物品費分が残ることとなった。 延期された、小学校のデータの検討会は次年度に実施する予定である。よって、繰り越し分のうち、検討会の旅費に必要な諸経費は、調査スケジュールの確定に合わせて使用していく予定である。図書などの購入も適宜、行っていく予定である。
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Research Products
(4 results)