2017 Fiscal Year Research-status Report
健康と食の「リスクをめぐるコミュニケーション」に関する実証研究
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16K04038
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Research Institution | Tokyo International University |
Principal Investigator |
柄本 三代子 東京国際大学, 教育研究推進機構, 准教授 (90406364)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 食 / コミュニケーション / メディア / リスク / 公共性 |
Outline of Annual Research Achievements |
7月に新潟大学で開催された日本マス・コミュニケーション学会春季研究発表会では「食の安全をめぐる政府広報とマスメディアの責任」というタイトルで、遺伝子組み換え食品をめぐってどのように食の安全と不安が語られるか、メディア分析を行なった。この報告内容は「研究発表論文集」としてもまた公表されている。11月に東京大学で開催された日本社会学会大会では「リスクディスコミュニケーションが生みだす食への不安――『コミュニケーション』の狭隘な理解はいかにして可能か」というタイトルで報告を行ない、さまざまなリスクをめぐるコミュニケーションの様式を分類し、それぞれの違いがどのように発生するものであるか実証的に論じた。同じく11月に九州大学で開催された科学技術社会論学会年次研究大会では「食の安全をめぐる『コミュニケーション』の批判的検討」というタイトルで報告をおこない、政府によって主催される各リスクコミュニケーションの審議過程について批判的に検討し問題点を指摘した。 スポーツ社会学会誌『スポーツ社会学研究』へ投稿した「身体と食の公共性を奪うもの――2020年東京オリンピック・パラリンピックという社会的装置はいかに機能するか」では、「食の安全」そのものがいかにして消費の対象となるのか論じた。 また2018年にカナダ(トロント)で開催される国際社会学会へ、’How can we communicate with others by food risk?’というタイトルで報告申込を行ない報告発表が認められた。以上のように成果を公表しつつ、並行してフィールドワークやインタビュー調査等を継続的に行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献研究の進捗は予定どおりである。調査についても、政府系のリスクコミュニケーションの実践や、原発事故の影響があった地域でのリスクをめぐるコミュニケーションの参与観察を行い一定の知見を得ている、またメディアにおいてどのように食の安全が語られるのかについても分析した。以上については各学会で報告を行なうことにより、本研究事業における成果のほとんどを随時公表してきた。論文としても一部公表し、さらに投稿する予定で現在取り組んでいる。また本研究事業の大きな目的であった、2018年7月の国際社会学会報告の報告エントリーもおこない採択された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、2018年7月にカナダ(トロント)で開催される国際社会学会や、同9月に甲南大学で開催される日本社会学会を中心として、研究成果を報告発表することで研究の推進を図っていく。また論文投稿の準備もすすめつつ、それを下敷きとして研究成果を単著としてまとめるべく、出版企画を練り、出版の実現へ向け交渉を進めていく。
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Causes of Carryover |
(理由) 次年度使用額が発生した主たる理由は、質的調査をすすめる過程において、仮説がさらに鍛えられ、調査対象者の絞り込みと文献研究に時間を要したためである。これは研究の遅れを意味するものではなく、本研究事業最終年度にあたる2018年度に実施する調査への十全な準備となっている。これによって、繰越金を含めた予算消化を見込んでいる。このことによって研究計画の大幅な変更はない。 (使用計画) 具体的な使用計画としては、フィールドワーク調査や、インタビューその他研究協力者への謝金、またカナダ(トロント)で開催される国際社会学会への渡航・参加費などが中心となる。
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