2017 Fiscal Year Research-status Report
河川をめぐる政策・法制度の変遷についての研究 ―近現代日本の社会変動を読み解く
Project/Area Number |
16K04041
|
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
田中 滋 龍谷大学, 社会学部, 教授 (60155132)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 河川政策 / ナショナリゼーション / 省有化 / 中央-地方関係 / 社会変動 / 公-共-私 |
Outline of Annual Research Achievements |
近世から明治初期にかけて河川は各種用水の供給源や舟運路として重視されてきたが、明治後期には水力発電事業の水利権参入により利水競合問題が起こる。この利水競合問題に象徴されるように、河川は歴史的に見て常に利害対立の焦点となってきた。河川をめぐる政策・法制度の変遷は社会全体の変動を映すいわば<鏡>となってきたのである。明治以降の河川の政策・法制度の変遷を社会変動の一般的な諸要因と理論的に関連づけて分析し、近現代日本の長期の社会変動を逆照射することが本研究の目的である。 平成29年度は、熊野川流域での十津川大水害(明治22年)後の村民の北海道移住について調査するため、新十津川町を訪れ、史資料収集ならびにインタビュー調査(町役場など)をおこなった。得られた一つの知見は、災害すらもがナショナリゼーションのメカニズムの下で処理されたということである。災害によって故郷を奪われた人々に北海道開拓という名の国土開発(領土の実質化)というナショナリゼーションの一翼を担わせたのである。 また、平成29年度には、利水競合問題を考える上で重要な要因の一つである「省有化」の理論的研究を進めた。ナショナリゼーションにとって領土が重要な要素となるように、省有化にとってはそのテリトリー(管轄領域)が重要である。同様に、ナショナリゼーションにとって「国民」あるいは「臣民」が重要であるように、省有化にとってはそのクライアントすなわち「省民」が重要である。 こうした視点によって、利水競合問題も新たな分析が可能となる。すなわち利水競合問題を契機として、人々が各省庁の「省民」となっていくという現象(省民化)が起こったのである。これを<公-共-私>という図式の下で考えると、明治初期における<共>の排除(入会権への圧迫など)の後に残されるはずの<私>も「省民化」されるという形で<公>に吸収されていったということになる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成29年度は、研究協力者などと実施を予定していたフィールド調査を、調査日程の調整上の問題や研究代表者が研究科長としての学内業務に忙殺されたことなどで十分に行なうことができなかった。そのため、予算執行を平成30年度に回さざるを得なくなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、長良川と熊野川でのフィールド調査の他に、明治22年の十津川(熊野川支流)大水害で十津川村の村民が大挙して北海道(新十津川村)に移住した経緯をナショナリゼーションの観点から平成29年度に続き再度調査・分析する予定である。
|
Causes of Carryover |
平成29年度は、研究協力者などと実施を予定していたフィールド調査を、調査日程の調整上の問題や研究代表者が研究科長としての学内業務に忙殺されたことなどで十分に行なうことができなかった。そのため、予算執行を平成30年度に回さざるを得なくなった。 平成30年度は、長良川と熊野川でのフィールド調査の他に、明治22年の十津川(熊野川支流)大水害で十津川村の村民が大挙して北海道(新十津川村)に移住した経緯をナショナリゼーションの観点から平成29年度に続き再度調査・分析する予定である。
|
Research Products
(2 results)