2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K04044
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Research Institution | Iida Women's Junior College |
Principal Investigator |
武分 祥子 飯田女子短期大学, 看護学科, 教授 (30442156)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 専門職 / 協働 / 発達障害 / 自閉症 / 医療 / 福祉 / 教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、研究課題「ベトナムの障害者支援における専門職の協働」のために、ハノイ市内の療育センター及び特別学校の実践活動を調査対象として、専門職(医療職、心理職、教育職、福祉職)の役割とその具体的内容、協働の意義と課題を明らかにすることを目的としたものである。 研究課題2年目の平成29年度は、①平成28年度の調査結果をもとに論文執筆、②平成28年度の調査結果と考察をもとに、平成29年度の報告研究会開催・調査準備、③1回の現地調査を実施した。①に関しては、『アジア・日本のインクルーシブ教育と福祉の課題』(2018年、クリエイツかもがわ)において、調査報告「ベトナムの障害者教育・福祉の実情と課題」(黒田学、武分祥子、小西豊)として調査結果を執筆した。②については、平成28年度の結果を3回の共同研究会(3月22日、4月24日、6月16日)で報告・整理し、次回の課題を導き出した。その上で、平成29年度の調査計画と研究協力者を選定した。研究協力者として、2017年11月は黒田学氏(立命館大学)、菱田博之氏(飯田女子短期大学)に依頼を、2018年3月は黒田氏または菱田氏、川手弓枝氏(飯田女子短期大学)を予定した。③として2017年11月と2018年3月の2回の現地調査を企画した。事前に確認し了解を得て海外渡航の手配をしていたものの、11月調査は調査先であるサオマイセンターの急な都合により実施不可能となった。延期等できうる限りの調整を試みたが、結局3月調査1回のみの実施となった。国内移動も含めて日程は3月17日から23日までとし、ハノイ市内のサオマイセンターに3月19日から21日までの3日間、研究代表者、黒田学氏、川手弓枝氏の3名で、参与観察およびインタビュー調査、ワークショップを実施した。22日はニャンティン障害児学校と新設の民間障害児センターを訪問見学して新たな知見と課題を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度に実施予定であった2回の調査のうち、11月に実施予定であった1回が不可能になったことが研究課題に遅れが生じている理由である。 その11月の調査については、2017年3月の現地調査の折に具体的な日程を、調査受け入れ先のサオマイセンター所長と打ち合わせして了承を得ており、旅券と宿泊ホテルも手配をしていた。しかしながら、調査実施の約2週間前に、センターの都合(所長のタイ出張・招聘のため)により調査延期の打診があった。研究代表者により電子メールでの事情の確認、さらに通訳者を介して現地で電話にて確認した上で、日程変更も視野に入れて調整を試みた。結局11月の調査を断念せざるを得なかった。そのため3月の調査に向けて研究課題を精査し調査内容を練り直した。11月実施予定だった医師による診察を中心に調査するために、現地で医師や心理職が使用している問診票及び診察資料を入念に吟味した。さらに依頼を受けたワークショップの準備をした。 2018年3月調査では調査者3名(武分、黒田氏、川手氏)により、19日にサオマイセンターで全日程の打ち合わせと自閉症クラスの見学、20日に同施設で医師と心理職による診察の参与観察(5事例の親子診察と支援介入の様子)、診察後に医師と心理職にインタビューを実施した。21日は、サオマイセンターで開催されたワークショップ(参加者はセンター職員、障害児教育に従事する地域の専門職とセンターに通っている子どもの家族等)で、センター職員の報告を聞くとともに、こちらは「日本の乳幼児健診における自閉症児への支援と課題」を発表し意見交換した。22日は、ニャンティン障害児学校で自閉症児クラスの見学と担当教員へのインタビューを実施した。この調査からは、次年度の研究課題を見出すことができたが、日程が限られており、研究課題の進捗状況としては予定通りとはいえなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の現地調査と入手した資料をもとに内容を整理・分析をした結果、今後に推進すべき研究の推進方策が3点明らかになった。 研究の推進方策の第1として、障害をもった子どもたちの栄養に関する支援介入を挙げる。障害児の診察(医師と心理職)に立ち会い、診断の様子や支援介入の実際という一連の流れを観察したことで、子どもと家族に対する栄養面からのサポートに課題があることが確認できた。次年度は栄養面の支援について受け入れ先施設の専門職と協働することを課題の一つとする。そのために、日本での障害をもった子どもへの栄養サポートを行う研究者に協力を打診する。第2として、サオマイセンターを拠点とした障害児支援のネットワークを分析する。今回、医師の診察に立ち会ったことで、医師が診察を通してそれぞれの子どもの支援先のマネジメントをしていることが確認できた。以上より、サオマイセンターが診察と通所支援にとどまらない、地域の障害者支援や専門職教育の拠点としての役割を果たしている点を追究していきたい。その第3として、これまでのようなワークショップでの報告交流を継続し、障害児にかかわる専門職の実践の現状とその中でのニーズや課題を導き出す。 以上の3点を推進方策として明確にした上で、今後の研究を発展させる。加えて、研究課題への取り組み3年目として、研究の成果をまとめ最終報告として学内外に公表して行く。公表先として2018年11月に開催(大阪)される日本特別ニーズ教育学会での研究報告を予定している。さらに調査協力いただいているハノイ市のサオマイセンター及びニャンティン障害児学校の専門職に対する技術移植という点から、研究者たちの介入の意義を聴取していきたい。
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Causes of Carryover |
平成29年度に実施予定であった2回の調査のうち、11月に実施予定であった1回が不可能になったことが、次年度使用額が生じた理由である。2018年3月調査の折にサオマイセンター所長からは、11月調査ができなかったことについて丁寧な謝辞を頂いた。 平成29年度に実施不可能となった1回の調査を加えて、平成30年度は、合計2回の現地調査を実施することにする。これにより、平成28年度からの3カ年において、現地調査を合計で5回実施ということにする。平成30年度の2回の調査のうち、1回はハノイ市外のサオマイセンター協力施設へも出向くことで、さらにエリアを広げてサオマイセンターのネットワークを分析することも視野に入れる。ハノイ市外の調査地に向かうには、これまで以上に移動のための交通費を要することになる。研究協力者らを日本から同行するためさらなる経費のかかることは想定される。さらに、今回まではベトナム語通訳者を1名依頼して、現地調査を実施していたが、研究協力者も複数であることから、内容や必要に応じて通訳者を複数配置したいと考えている。現地スタッフとの交流は英語でも可能であるが、専門的な内容となるとベトナム語通訳は必要不可欠である。今回使用できなかった研究費は、平成30年度の研究を一層充実させるために使用する所存である。
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