2016 Fiscal Year Research-status Report
非正規雇用の拡大と男性性変化-企業別シティズンシップによる排除と承認をめぐる葛藤
Project/Area Number |
16K04046
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
今井 順 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (30545653)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 男性性 / 非正規雇用 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の計画は、まず前回調査から得られた知見を再検討することであった。2015年の日本社会学会、イタリア・ヴェニス大学で行われた日本の若者の変化に関する国際学会での発表を経て、現在英文著書の一章(分担執筆)「Struggling Men in Emasculated Life-course: Experiences of Non-Regular Employment among Younger Generations in Japan」として、公刊準備を進めている。 その中で徐々に明らかになってきたのは、現在の非正規雇用男性たちが、親も配偶者も同僚も、誰も非正規であることを悪い生き方だと明確には否定はしない、やんわりと主体性を認められつつ、しかし積極的な「承認」は得られない社会空間に日々接していることであった。非正規雇用男性たちは、概ね皆自らの現状を完全に肯定できず苦しむ部分を持っていたが、モラトリアムを強調したり、自分の経済合理性を強調したりといった正当性獲得の努力をしていた。それらは「男性性」というコンネルらの提唱する「性別秩序」のダイナミズムを想定することで理解しやすくなることが分かった。例えば、もっとも目立った適応・戦略は性別役割分業において保守化することであったが、こうした態度の形成も、相変わらず男性稼ぎ主イデオロギーが支えている支配的男性性への近さを周囲との関係において示すという、自己正当化の努力ではないかと理解することでしか、その原因は分からないのではないかと思われた。 現在は、前回調査から得られたこうした知見を整理し、あらためて調査票調査に盛り込む作業を行っている。また、インタビュー調査についても、さらに深堀できるよう準備を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の予定は、前期においてこれまで行ってきた「知識・サービス経済における新しい男性性」(基盤研究C:2011年~2015年)から得られた知見を再検討し、後期において新たな調査の具体的な設計を行うことであった。 まず、前回調査から得られた知見については、2015年の日本社会学会、イタリア・ヴェニス大学で行われた日本の若者の変化に関する国際学会での発表を経て、現在英文著書の一章(分担執筆)「Struggling Men in Emasculated Life-course: Experiences of Non-Regular Employment among Younger Generations in Japan」として、公刊準備を進めている。 またそれと並行して、新たな調査の準備も行っている。例えば前回の調査票調査では、正規・非正規労働者に対して相互の評価を聞くような質問は盛り込めなかったが、今回はそうした間接的な相互関係を明らかにするような質問項目も組み込んでいくことを考えており、具体的な質問内容について検討を進めている。企業別シティズンシップの存在を明確に示せる部分であり、慎重に検討作業を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在行っている新しい調査の設計を進め、今年度前期以降、実査に入りたいと考えている。調査対象企業の選択については、前回調査の経験から、コールセンターなど新しい産業における新しい組織にコンタクトをとることが望ましいことが分かっており、随時調査協力を求めていく予定である。
|