2017 Fiscal Year Research-status Report
非正規雇用の拡大と男性性変化-企業別シティズンシップによる排除と承認をめぐる葛藤
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16K04046
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
今井 順 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (30545653)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 男性性 / 非正規雇用 / 象徴的暴力 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度の計画は、まずヴェニス大学(伊)、トゥールーズ大学(仏)の研究者を編集者とする英文研究書(Being Young in Super-Aging Japan:Formative Events and Cultural Reactions、2018年5月Routledge社より出版予定)の一章(分担執筆)「Struggling men in emasculated life-courses: Non-regular employment among young men」を完成させることであった。編者の一人であるヴェニス大学、パトリック・ハインリッヒ准教授の3か月にわたる日本滞在中、集中的に議論を行い修正を加え、2018年に入ってようやく最終稿を提出することができた。同論文の内容については、2017年9月にロンドン大学でも発表の機会を得た。 中心的な議論は、現在の非正規雇用男性たちが、家族や職場の人々から積極的な「承認」を得られない社会空間で日々生活しているということであり、彼らの様々な態度や行動がその中で承認を求めるものとして理解できるということであった。非正規雇用男性たちは、モラトリアムを強調したり、(正社員男性には示すことのできない)使用者との対等な関係を強調したり、性別役割分業において保守的な姿勢を示すことで、それを達成しようとしている。支配的なイデオロギーを積極的に内面化することで自らの正当性を示そうとする戦略は、自らを劣位に置き排除しようとする論理そのものの中に自らを投企することであり、象徴的暴力の構造に自ら参加してしまうことに他ならない。 現在は、前回調査から得られたこうした知見の整理を終え、新しい調査票調査を行う準備段階にある。研究代表者が大学を移動したことでやや遅れが生じているが、研究期間の延長の必要なくプロジェクトを終えられる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度の予定は、まず英文研究書(Being Young in Super-Aging Japan:Formative Events and Cultural Reactions、2018年5月Routledge社より出版予定)の分担執筆担当分を完成させることであった。上記した通り、この件については編者との集中的な議論等により、大きな果実を得ることができた。非正規労働に携わる若年男性の示す態度について、日本の雇用―福祉レジームに埋め込まれた特有の性別秩序を想定することで、理解が深まることを示すことができたと言える。 こうした議論の深まりは歓迎すべきものであったが、その結果新たな調査の準備についてはやや遅れたと言わざるを得ない。研究代表者が移籍(北海道大学から上智大学へ)したこともあり、実査が半年程度ずれ込んでいる。具体的な調査計画は、昨年予定したとおりの内容(正規・非正規労働者双方に相互の評価を聞いたりといった、企業別シティズンシップの概念をより生かす方向性)で概ね固まっており、夏以降実査ができるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在概ね設計が終わっている新しい調査の実査計画を詰め、今年度前期以降、実査に入りたいと考えている。調査対象企業の選択については、前回調査の経験から、コールセンターなど新しい産業における新しい組織にコンタクトをとることが望ましいことが分かっており、随時調査協力を求めていく予定である。半年程度の遅れが生じているが、今年度後半には初期分析の発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
実査の遅れによるもの。今年度実行する調査で使用する予定。
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