2016 Fiscal Year Research-status Report
地方都市のモビリティ--人口縮小期における都市間移動の社会学
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16K04052
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
貞包 英之 山形大学, 基盤教育院, 准教授 (20509666)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 勘一 成城大学, 経済学部, 教授 (30337696)
小澤 考人 東海大学, 観光学部, 准教授 (50631800)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | モビリティ / 人口移動 / 観光 / 消費社会化 / 人口減少 / ショッピング |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の初年度となる本年度は、まずモビリティの定義を理論的に考察し、住民票の移動にとどまらず、短期的な移動、さらにはそれに加え、観光やショッピングなどを含む地方都市のモビリティを考察する上での課題と問題点を検討した。 それをもとに、山形県を対象に呼び予備的なフィールドワークをおこなうとともに、その一環として、山形県庁への観光政策のヒアリングを実施した。 さらにそれらの研究を前提として、地方におけるモビリティを明らかにするためにアンケート調査を設計し、ネットを通じ山形県居住者に対して行なうことで、1025人の有効回答を得た。 それによって、地方のモビリティの状況を一定程度あきらかにすることができた。おもな発見としては、①地方居住者には、定住者のみならず、Uターン者、Iターン者が数多く含まれ、山形県ではそれぞれ27.4%、31.0%、41.6%と拮抗していること、②こうした分布は、県庁所在地、他市部、郡部などで大きく異なり、たとえば県庁所在地では県外からの移住者、他市部では定住者、郡部では県内移住者が目立つこと、また③県庁所在地では「通学や仕事のため」、他市部では「家屋や土地などの資産を持っているから」、郡部では「結婚のため」などが居住理由として優勢であり、④こうした移動経験や移動移行には学歴や資産保有が一定の影響を与え、⑤さらにそれは地域のショッピングセンターや東京や仙台への観光やショッピング、帰省のための移動状況にも多大なちがいをもたらしていることなどが確認された。 以上より、地方のモビリティが通常想定される以上に活発であるとともに、階層的な分断があることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の初年度として、本年度はモビリティの状況について分析する枠組みを作りだすとともに、それを実際にアンケート調査の形で確認することができた。今年度の研究は山形県を対象としたものであり、それだけで東北、または地方一般の状況をあきらかにするものとはいえないことも事実だが、今後の研究のための土台として、貴重な調査・分析を行うことができたと自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はモビリティ研究の諸課題を検討するとともに、引っ越しや観光などのモビリティの状況を山形県在住者を対象として確認した。 しかしこうした調査結果は、①東北、または地方一般に妥当するものかはわからず、また②ネットを通した調査ということで信頼性に一定の疑いが残る。 こうした欠点を補うために、来年度以降は、まず①山形以外の東北各県に対し同様の調査を行い、それを通して、地域固有の特徴について比較分析したい。 さらに②調査の信頼性を検討するために山形市を対象としたより総合的な調査を企画し、今年度の調査と比較検討したい。 以上が来年度以降の研究の予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は山形県以外の調査を実施することができなかった。それを来年度以降におこなうため助成金の使用を計画した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
山形県以外の東北各県の調査、また山形市を対象としたより総合的な調査を行う予定である。
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