2019 Fiscal Year Research-status Report
原発避難計画への対応を契機とした地域コミュニティの問い直し
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16K04058
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
松井 克浩 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (50238929)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 原発避難 / 福島第一原発事故 / 地域コミュニティ |
Outline of Annual Research Achievements |
1.広域避難計画策定の前提となる福島第一原発事故からの避難者・支援者を対象としたヒアリングを、新潟県新潟市および柏崎市において実施した。また、長期化する福島第一原発事故からの避難に関する文献・資料を収集し、検討を進めた。 2.避難者・支援者を対象としたヒアリング結果にもとづいて、震災と原発事故以来、時間の経過とともに複雑化・多様化している避難者の問題と、それに対応した支援者の活動や課題を明らかにした。本研究の最終年度にあたるので、前年度までのヒアリングデータや収集資料についても、取りまとめの検討に着手した。 3.これまでのヒアリング結果や文献・資料の整理にもとづき、本研究の成果の一部として、フランスの学術雑誌から依頼を受けて下記の論文を刊行した。Long-term Evacuation due to the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident and Its “Invisibility”,Cahiers Fransois Viete, serie Ⅲ, 7, 2019,pp.95-105.また日本村落研究学会大会地域シンポジウムにおいて、「原発避難の記憶と記録」と題して本研究の研究成果を報告した。 4.引き続き、柏崎刈羽原子力発電所が立地する新潟県の地域防災計画・広域避難計画、および新潟県が設置した「原子力災害時の避難方法に関する検証委員会」による検証資料を収集し、避難計画の検討・検証過程について分析した。その結果、複合災害への対応や住民への情報伝達等において多くの課題があることを明らかにした。 5.こうした課題も念頭においた上で、本研究の貢献すべきテーマとしては、予想を超えて長期化している原発避難の状況を詳細に記録し、今後の原発避難計画策定に資することであるとあらためて確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.原発の再稼働が検討されている新潟県において、地域防災計画・広域避難計画に関する資料収集、避難計画の検討過程の分析を行った。原子力災害時の避難計画を策定する上での課題を確認し、取りまとめのための手がかりを得ることができた。 2.本研究計画の推進にとって、福島第一原発事故による広域避難の検証は不可欠である。新潟県・福島県および関東地方における避難者と支援者へのヒアリングにもとづいて、長期・広域避難の問題性について重要な知見を得ることができた。 3.本年度までの調査研究により得られた知見にもとづいて、論文の刊行や講演・学会報告において中間的なとりまとめを行い、公表した。また、ヒアリングで得られたデータについてはテキスト化を実施し、最終的な取りまとめに備えている。 4.勤務校の管理職(副学長)業務に時間をとられたため、補充調査および最終的なとりまとめを完了することができなかった。そのため、補助事業期間の延長を申請し、承認された。
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Strategy for Future Research Activity |
1.新潟県・福井県等の地域・行政関係者から、地域防災計画・広域避難計画に関するヒアリングと資料収集を進めてきたが、それらをふまえて、原子力災害時の避難計画を策定する上での課題について検討し、分析する。 2.原発避難計画を策定し、実効性をもたせるためには福島第一原発事故による被害の検証、なかでも避難生活の検証は不可欠である。事故後9年を経過しても、被災者の生活再建は進まず、被害は多様化・複雑化している。これまで取り組んできた検証作業の結果を分析し、必要な補充調査を行った上で、取りまとめる。 3.研究成果については、引き続き著書や論文、学会報告、講演等を通じて積極的に発信する。
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Causes of Carryover |
1.研究計画に遅延が生じたため、補助事業期間の延長を申請し、承認された。遅延の理由は、勤務校の管理職(副学長)業務である。 2.原発避難および避難計画策定にかかわる補充調査を新潟県・福島県で実施する。現地調査で得られたヒアリングデータのテキスト化や関連資料の収集にも経費を使用する。
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