2017 Fiscal Year Research-status Report

集落営農の展開に伴う農地観・農村観の変容に関する実証的研究

Research Project

Project/Area Number	16K04059
Research Institution	University of Fukui
Principal Investigator	伊藤勇福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(総合グローバル), 教授 (90176321)
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha)	田中志敬福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(総合グローバル), 講師 (80612407)
Project Period (FY)	2016-04-01 – 2020-03-31
Keywords	集落営農 / 広域化 / 兼業稲作 / 農地観 / 農村観
Outline of Annual Research Achievements	（１）文献研究：集落営農の法人化，広域化，多角化など，集落営農の新展開に関する実証的研究や総括的論文などの先行研究について読解を進めるとともに，それらの知見と現代日本農村における「家」・「村」の存在理由や命脈に関わる諸見解との関連性を検討して，本研究における事例研究を通して得られつつある知見の農村社会学的な意味づけを考察した。その成果については新社会研究会例会で報告し，意見交換を通して本研究の位置づけに関し重要な示唆を得た。（２）実地調査：前年度の聞き取り調査およびそれ以前のインフォーマント調査の結果等を総合して，事例研究の主要な対象とする村落を越前市の市街地近郊および山間地に位置し単一集落を超えた広域的集落営農を志向する2つの村落に定めて，各種農業統計や行政資料・自治体史などにより基礎情報を収集・分析するとともに，両村落の全世帯の概況，自治組織，共同活動，農家経営，兼業状況，集落営農組織の設立と展開，現時点での成果と課題，そして家・村意識，農村観，農地観の変化などについて，集落営農組織や自治組織のリーダー層への詳しい聞き取り調査を実施して相当量の第一次的資料を獲得した。これらに基づき，両村落における集落営農の取り組みの成果と課題，そしてそれらが示唆する農村社会学的意味について，北陸地域政策研究フォーラムにおいて発表し，意見交換を通して次年度以降の調査研究の展開方向について重要な示唆を得た。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned. Reason 今年度の主要な成果は，文献研究および実地調査の双方において，現在の集落営農の展開と従来の家・村のあり方の根本的な変容とが密接に関連しているという点を，他の研究者による観察報告や我々自身による観察事実に即して具体的に把握できたことである。当初は事例村落において農村・農地観に関する調査票調査を実施する予定であったが，調査を進めるにつれて上記の点についての事例村落の特性に即した詳しい調査が一層重要だと強く認識されたので，インフォーマント聞き取り調査に精力を傾けた。そのため調査票調査は延期し，今年度の知見を踏まえて次年度以降に，事例村落の実情に即し調査対象者をより特定した調査として企画・実施することにした。当初の計画に変更は生じたが，今年度から研究分担者を補強して取り組んだ聞き取り調査の成果は大きく，研究全体の進捗状況としては，おおむね順調に進んでいると自己評価する。
Strategy for Future Research Activity	事例村落および近隣村落における個別の項目ごとのインフォーマント調査を継続するとともに，研究分担者との協同で，集落営農に対する意見・態度，仕事および家族生活の現況と将来設計，家・村意識の持続と変容などを調査項目とする調査票調査を企画し，早ければ2018年度中に実施する。研究成果発表としては，アジア農村社会学会国際大会（2018年8月，インドネシア・ハサヌディン大学で開催）において2017年度までの調査知見を中心に口頭発表するとともに，同大会プロシーディングに論文（英文）を投稿する。
Causes of Carryover	研究分担者に配分した研究費の使用において，当初に予定していた学会参加および情報収集のための出張を，次年度の研究課題に関わる成果発表および情報収集のための出張に変更したため。