2016 Fiscal Year Research-status Report
福祉国家のワークライフバランス効果――東アジアの都市間比較による検証
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16K04061
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
上村 泰裕 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (70334266)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 福祉国家 / 東アジア / ワークライフバランス |
Outline of Annual Research Achievements |
名古屋における仕事と子育ての両立の現状を明らかにすべく、企業の人事部を対象とした聞き取り調査と、名古屋市「平成25年度子ども・子育て家庭意識生活実態調査」の再分析を行なった。企業人事部への聞き取り調査は、名古屋市に本社を置く製造業6社と卸小売業7社の計13社を対象に、名古屋大学文学部の社会調査実習の一環として学部生・大学院生の協力を得て実施した。企業における育児休業や子育て支援の現状について、貴重な知見を得ることができた。名古屋市子ども・子育て調査は、名古屋市子ども青少年局子ども未来課からデータの提供を受け、綿密なデータクリーニングを施したうえで、就学前の子どもがいる世帯に絞って再分析を行なったほか、子どもの貧困問題に焦点を当てた分析も行なった。 一方、台湾については、福祉政治に関するレポートを発表した。沸騰する年金改革問題に焦点を当てたものであるが、ワークライフバランスに関する最近30年間の変化についても言及した。最大の変化は子育て中の女性の労働力化が進んだことである。30歳台前半の女性の労働力率は、1980年の39.7%から2015年の82.3%へと倍増した(日本は71.2%)。特に6歳未満の子どもがいる母親の就業率は26.4%から62.9%まで増加した。こうした急激な変化に保育サービスの整備がともなわないので、必然的に少子化が進むことになる。2013年の政府調査によると、3歳未満の乳幼児の世話の主な担い手として祖父母が37.1%を占めた。その他は父母51.8%、ベビーシッター9.1%、保育所0.7%などである(行政院主計総処『102年婦女婚育與就業調査報告』)。つまり、現在の台湾では、仕事で忙しい母親に代わって祖母が子育てを担っているのである。こうした基本情報の整理を行なうとともに、次年度の本格的調査に向けて現地の専門家と情報交換を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『福祉国家のワークライフバランス効果(1)――名古屋市における仕事と子育ての両立』と題する全288頁の調査報告書を刊行できたことと、次年度の台湾調査に向けた準備を進めることができたことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
名古屋における調査(今年度は公私各部門の保育サービスの利用状況調査、および子育て家族のWLBに関する聞き取り調査)を継続するとともに、台湾における調査を実現する。
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Research Products
(6 results)