2018 Fiscal Year Research-status Report
Women and religious civil society in Japan: Implications for participatory democracy
Project/Area Number |
16K04064
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
CAVALIERE PAOLA 大阪大学, 人間科学研究科, 特任講師(常勤) (10769582)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 宗教 / ジェンダー / 社会貢献活動 / 災害支援活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年4月~2019年3月の主な活動は調査対象の創価学会、GLAの関係者・信者たちへのインタビューを行った。とくに熊本地震における災害支援活動に参加する女性による応急活動の経験の聴き取り調査した。2016年4月の熊本地震においては応急対応期が実質的に不在であったという声が多数聞かれた。特に被災者の多様性について意識されておらず想定が不十分であった。本研究は宗教団体の創価学会とGLA(ジー・エル・エー)に所属する女性の避難生活や復興支援活動に関する聴き取り調査に基づき、災害時の支援活動に女性の視点を反映させる重要性と課題を検討してきた。熊本地震に焦点を当て、応急活動や支援活動において女性のニーズがいかに把握され、活動へ反映されたのかを明らかにした。結果として女性の視点を含めた応急対応を行った創価学会とGLAが、被災者の多様性を念頭に置いて避難所の生活環境を整え、物資の供給を充実させることに成功した。応急救援の初期から復興に至るまで宗教団体の女性が主体的に参画できる仕組みが整えられていたことで、復興資源への平等なアクセスの必要性がわかったのである。これにより女性の災害脆弱性を高めている構造を救援や復興を通して修正していたことが明らかになった。 その結果は学会・研究会に参加して研究上の情報交換と発表を行った。ヨーロッパと南アフリカの宗教・ジェンダー・社会貢献に関わっている研究者とネットワークを作り、データシェーリングや情報交換を行っている。平成30年度の研究業績は学術誌論文5 学会発表4(うち国際学会4)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、当初の予定通り進展している。先行研究の検討ては、広く国内外で公刊されているジェンダーの視点からの宗教団体の社会貢献活動・災害支援 活動についてレビューし調査のための文献を絞った。減災に関する調査研究において、多様性・ジェンダーの視点を取り入れるとは、具体的に何を意味するのか、多様性・ジェンダーの視点を取り入れた調査研究では、この視点を導入したことによって、どのような学術的成果や政策・実践へのインパクトがあったか、そして、これまで、この視点を明確に意識してこなかった減災の諸研究分野において、どのように多様性・ジェンダーの視点を取り入れることができそうかについて明らかにした。また聞き取り調査に基づいて2016年4月の熊本地震においては応急対応期が実質的に不在であったという声が多数聞かれた。特に被災者の多様性について意識されておらず想定が不十分であった。その状況下てジェンダーや多様性への配慮という視点から支援活動を担ったのは被災地域で活動していた宗教団体に属している女性支援グループであった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の本研究の目的は熊本地震の事例から見る事情、復興に際して宗教団体に属する女性が貢献できるとすれば、それはどのような場面においてであろうかについて理解、とりわけどのような状態にある人・集団・地域が特に脆弱なのか、レジリエント(脆弱性の対概念)なのか、そこに見られる差異とは何であり、なぜ生しているのかを明らかにする目的である。近年の災害研究は「脆弱性/レジリエンス」パラダイムを採る。被害や復興において差異を生み出す要因はジェンダー、ケア責任の有無・程度、地域の社会的ネットワークなどである。災害にレジリエンスづくるように女性の参画の確保を重要視していることとジェンダーの視点を盛り込むことが必要だと2015年の「仙台防災枠組2015-2030」に定めている。このように、日本は自然災害とジェンダーという分野でリーダーシップを発揮していくとされる。地震・津波などの自然現象そのものではなく、それにより被害を受ける人間社会の構造がもつ脆さと、地域の社会的・文化的資源が生活再建・地域再建に向かうための力を備えているかを問う。そこで自然と人間との関わり、脆弱性/レジリエンスにリンクするものとしての宗教文化に期待が寄せられていることを見ることが必要だ。したがって、本研究では該地域において宗教文化が社会構造とどのように関係し、被害や復興において差異を生み出すジェンダーの局面において発揮されるべき「レジリエンス(復元力・回復力)」にどのように寄与するか、が問われることである。
|
Causes of Carryover |
30年度に参加できなかた国内外の学術学会に発表する予定のため旅費が発生する。また引き続き研究計画通り調査と学術学会を行いますので調査費に至る経費が発生する。
|
Research Products
(7 results)