2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K04067
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
材木 和雄 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (70215929)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | クロアチア / 企業民営化 / 雇用喪失 / 縁故主義 / 移民 |
Outline of Annual Research Achievements |
クロアチアは労働力の国外流出に悩むポスト・コンフリクト国の1つである。その背景に就業機会の不足がある。本年度はその原因を分析した。主に3つの要因がある。 第1に市場経済への移行期に社会主義時代の過剰雇用が整理・放出されたことがある。しかしさらに2つの特殊要因が作用した。一つは内戦による経済混乱である。建物や生産設備を破壊され、倒産した企業も多かった。もう一つは社会有企業の民営化の影響である。その場合にしばしば起こった問題は、新しい所有者が企業経営の意思と能力をもっていなかったことである。彼らは陰で企業資産を巧妙に着服し、経営に行き詰まると企業を倒産させた。その結果、大量の雇用機会が失われた。 第2に長期の経済停滞である。私的部門の発展が遅れ、市場経済への移行後に大きく減少した雇用機会はほとんど回復していない。第3にクロアチアでは市場経済への移行後も公的部門の雇用が4割を超える。しかし、そこでの新規採用は大半が政党とその関係者の影響力に基づく縁故採用になっている。このような状況は縁故をもたない者の就職をいっそう困難にしている。 以上のことから、この国の就業機会不足の最大の要因は私的部門の弱さである。就業機会を増やすためには私的部門を発展させる必要がある。他方、公的部門では公平な従業員の採用を保証するような制度の導入が必要である。 しかし、国内の就業機会の不足を背景に労働力の国外流出が起こっている。とくに高学歴の若者の移民が増えている。その理由はこの国の近い将来に人々が希望を失っていることがある。これは政治不信と置き換えてもよい。政治指導者の約束に反し、経済状態はいっこうに改善しなかった。とくに2009年から2014年の長期の景気後退局面では雇用機会はさらに減少し、生活水準も低下した。移民は国民が国内での職業及び人生設計に希望や可能性を見いだせなくなった結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではユーゴスラヴィアの各地域を対象に5つの課題を設定した。第1にこの20年間に起きた大量の雇用喪失の原因の究明である。第2に雇用創出が困難な原因の分析である。政府はどのような雇用促進政策をとってきたのか。この地域のビジネス環境はどうなのか、何が投資の呼び込みや新規開業を阻んでいるのかを分析する。その上で投資の呼び込みや起業を促進するにはどのような障害を除去し、促進策をとるべきなのかを明らかにすることである。第3に政党雇用の実態・背景と是正策の解明である。この地域には極度の就職難とは真逆の現象がある。政府機関や公営企業などの公的セクターで一部の人びとが縁故採用によって容易に就職していることである。これは現地で「政党雇用」と呼ばれる現象である。その実態、背景的要因、是正のための課題を明らかにする。第4に就業促進策と経済成長戦略である。EU諸国や日本など他国の成功例に学びながら、就業率を改善するためにどのような雇用促進策をとることができるか。この地域の資源を活かした産業(観光業や農業)を発展させるためにどのような経済成長戦略を立案し、地域振興と就業機会の創出を実現できるのかを検討する。第5に健全な政治経済社会へ移行するための改革課題の究明である。就職難の原因と効果的な打開策が出てこない原因を探っていくと政治の質の問題にぶち当たる。政党雇用の背景的要因を調べていく場合もそうである。そこには移行期の国家に特有の構造的な問題が潜んでいる。たとえば政治腐敗であり、民主主義の機能不全である。これを明らかにし、健全な政治経済社会に移行するための改革課題を明示する。 以上の点について、本年度はクロアチアについて資料収集を行い、実態を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度はボスニア・ヘルツェゴヴィナを対象に研究課題を遂行する。しかし、前年度の研究過程で浮かび上がった問題を検討することも必要だと考えている。それは労働力の国外流出、言い換えると就労を目的とした国民の国外への移民である。これはプッシュ要因としては、国内に就業機会が不足していることが原因である。しかし、これは否定的な現象なのかを慎重に考える必要がある。グローバル化が進む社会、とくに単一市場のEUに加盟したクロアチアでは国内の労働市場だけで国民に就業機会を提供することは無理である。したがって、一定程度は国外への移民を許容する必要がある。研究計画を立案した当時は就業機会の創出を国内の労働市場を前提に考えていたが、グローバルな労働市場を前提に移民のポジティブな役割を考える必要がある。これが今年度の追加の検討課題である。
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Research Products
(1 results)