2018 Fiscal Year Annual Research Report
The problem of creating job opportunities in the post-conflict societies
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16K04067
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
材木 和雄 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (70215929)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 外国資本 / 投資環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は東欧の高成長グループの筆頭であるポーランドとの比較の上で、クロアチアとボスニアの経済停滞の原因を考察した。 ポーランドは大胆な市場開放政策を断行し、外国資本の直接投資を積極的に受け入れて経済成長のエンジンとしてきた。EU加盟によって国境はなくなり、関税や労働法制など様々な障壁がなくなった。ポーランドでは教育水準と労働意欲の高い労働者が多数存在し、その一方で賃金水準は西欧諸国の数分の一の水準であった。そのため西欧市場向けの輸出生産拠点として脚光を浴びた。同国では新規の工場の開設が相次ぎ、製造業の生産と輸出が大きく拡大した。日本の製造業は安価な労働力を求めて中国や東南アジア諸国に進出したが、欧州の企業は陸続きのEU域内に安価で優秀な労働力の供給源を見出し、好立地の輸出拠点を形成できた。 クロアチアも2013年にEUに加盟した。しかし、外国の直接投資は進まなかった。その理由は投資環境に魅力が乏しいことである。法人税が高く、土地の取得に規制が大きいこと、官僚主義的手続きが多く新規ビジネスの許認可に時間がかかる。ボスニアに至っては、改革が遅れEUの加盟候補にもなっていない。二つの国家的単位に分かれ、クロアチア以上に法制度と行政機構が複雑である。そのため新規ビジネスの許認可にいっそうの時間がかかる。 欧州諸国全体でみると、クロアチアやボスニアは労働力の供給国になっている。両国では近年失業者の数が減少している。これは国内の雇用が増えたためではなく、移民が増えたためである。失業問題の緩和は西欧の労働市場の需要増によって行われている。しかし、国内では働き手が増えない一方で年金受給者は年々増加している。社会保障費の雇用者負担は給与の三分の一に達し、企業経営の大きな障害である。働き手の数を増やし保険料収入を増大させる一方で給付水準を増やさないような社会保障制度の改革が必要になっている。
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Research Products
(1 results)