2017 Fiscal Year Research-status Report
メッシュデータによる都市地域(mdbUA)の設定にもとづく全国都市の趨勢分析
Project/Area Number |
16K04077
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
玉野 和志 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (00197568)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 都市地域 / メッシュデータ / 人口 / 人口推移 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度,とりあえず全国で105の都市地域の区分に成功したが,一般的に知られた都市が設定されなかったり,以前に行った太平洋ベルト地帯を中心とした地域での設定の際にはあまり齟齬のなかったDID(人口集中地区)との違いが大きかったりする課題が生じたので,まずは検証作業から始めた.その結果,全国で118の都市を設定するのが適当との結論に達した.その過程で,DID設定の基準値となっている人口密度4000人と,ここでのメッシュデータにもとづく都市地域(mdbUA)の基準値である5000人との間に,とりわけ地方都市においては大きな違いがあるようで,4000以上で5000人には満たない地域が,地方都市では多いことがわかった.そのため一般的な地方都市が設定されなかったり,DIDとの齟齬が大きくなったようである.したがって若干人口の多い地域にそった設定であることを前提に,全国で118の都市地域を「mdbUA2010」として設定したと理解しておきたい.また世界測地系と日本測地系での人口の違いを確認した結果,やはり若干のズレがあったので,世界測地系で比べることのできる1995年,2000年,2005年,2010年の4時点での人口の推移をまずは分析することとした. 分析の結果,118の都市地域のうち,この4時点で人口が継続的に増加している都市が52,一貫して人口が減少している都市が32,人口の増減が見られる都市が34であった.人口の推移を見るかぎり,日本の都市の状況はそれほど悪くはないことがわかる.ただし,その地域的な分布を確認すると,太平洋ベルト地帯に良好な都市が集中し,北海道・東北・九州では中核的な都市への一極集中が見られ,三大都市圏では東京圏への集中が突出している.いわば全国レベルと地方レベルの両方で,二重の意味での集中が進行していることが明らかになった. さらに,以上の結果をまとめて公表する日本語のヴェブサイトを作成した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度と第2年度までに予定していた全国版都市地域の設定に成功し,かつそれにもとづいた人口推移の分析を完了することができたので,おおむね順調に推移していると自己評価できる.ただし,学会報告を行ったうえで,広く検討に参加してくれるメンバーを募り,研究分担者に加わってもらうことまでには至らなかった.学会報告については本年度初頭に行う予定である.また,成果を報告する日本語のウェブサイトを作成し,興味のありそうな研究者に広く案内を行ったので,今後,研究分担者という形ではないが,検討に加わってくれるメンバーが増えることを期待している. また,人口推移にもとづく全国都市の趨勢分析という点では,すでにいくつか大変興味深い知見が得られているので,研究成果という点では,予想以上に大きな成果が期待できる.今後,いくつかの展開の方向を検討し,今年度中にその成果の内実を確かなものにできればと考えている.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策については,以下のように考えている.まず,2015年の国勢調査のデータが利用できるようになっているので,この最新データを組み込んで分析をし直す予定である.2010年までは人口が増加していて,2015年からいよいよ人口減少の段階に入っているので,この点での状況を把握しておきたい.同時に,2011年の震災の影響も確認できると想定される.さらに,より長期にわたって利用のできる日本測地系のデータを使って,90年代のバブル崩壊以前の時期を含めた趨勢分析を行う予定である.以上のデータを補足することで,バブル崩壊と東日本大震災という近年の大きな出来事をへて,日本の都市が現在どのような状況にあるかをより詳細に明らかにしたい. さらに,昨年度までの分析によって,二重の意味での人口の集中という支配的な傾向とそれゆえむしろ都市がそれぞれ適度の距離を保つことが相互の発展のために重要であることが読み取れたので,それらの一般的な傾向では説明のできない性質を示しているいくつか特定の都市について,その背景を事例研究によって探索してみたいと思う.つまり不利な位置にあるにもかかわらず人口を維持している都市や,逆に有利な位置にあるにもかかわらず人口を減らしている都市などの要因を事例分析によって探索し,都市の盛衰を規定する一般的な要因を探り出すことを考えている.当初,作成したデータベースに様々な変数を追加して一挙に分析することを想定していたが,そもそもどのような変数を追加することが有効であるかも判断がむずかしいことがわかってきたので,まずはこのような事例分析によって一般的な要因を探索するやり方に変更する方が有効と判断した.そのため本研究の期間中には一般的な分析にまでは進められないかもしれないが,その場合はまた改めて研究計画を練り直し,新たな申請を準備するつもりである.
|