2017 Fiscal Year Research-status Report
東海地方における外国人労働者の「逆転現象」~ブラジル人からフィリピン人へ
Project/Area Number |
16K04082
|
Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
高畑 幸 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (50382007)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | フィリピン日系人 / 集住 / 水産加工 / 共生 / 外国人の教育 / 外国人労働者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の2年目となる2017年度は、日本国内の調査地(静岡県焼津市、静岡県浜松市浜北区、愛知県蒲郡市、三重県松阪市、岐阜県可児市)のうち焼津市と浜北区を中心に、フィリピン日系人の労働と生活に関する質的・量的調査を行った。また、フィリピンのダバオおよびマニラ首都圏においても現地調査を行った。 焼津市では大人の労働問題(労働災害、雇用契約の問題)の調査および、子どもたちの就学上の課題に関する調査と学習支援活動を継続した。浜松市ではフィリピン人団体と協力して、来日後の就労状況と転職活動に関する数量調査を行った。その結果、フィリピン日系人の来日後の求職・転職経路は家族・親族ネットワークによるものが大半であることがわかった。 ダバオではフィリピン日系人(戦前の日本人移民の子孫)の代表団体である日系人会、マニラ首都圏では新日系人(2009年の改正国籍法施行により日本国籍を取得した子どもとその母親)の日本への送出を担う団体においてインタビューを行った。その後、上記のルートでフィリピン日系人を多数雇用してきた日本企業(食品加工等の製造業)を訪ね、日系人雇用の経緯と彼らの定着状況、子どもの教育的課題について経営者から話を聞いた。この一連の作業により、フィリピン日系人の送り出しから日本での第一着地点、その後の移動と家族の呼び寄せ(連鎖移動)、そして集住地の形成という「線」が見えてきた。 これらの成果を2017年9月に日本都市社会学会大会において報告し、2018年度内に論文として出版予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内の調査地である4市1区のうち、焼津市、浜松市浜北区については、質的および量的調査を進めることができた。その成果として、焼津市のフィリピン日系人の就労および生活状況について、学会報告を行った。 特に、焼津市においては、本研究開始時からさらにフィリピン人が増えた(2015年末1177人→2017年末1503人)。焼津市内ではフィリピン人の互助団体や労働組合が設立されている。また公営住宅での居住も把握でき、フィリピン人コミュニティに関するさまざまな情報を得やすくなっている。浜松市においてもフィリピン人団体の協力が得られ、研究を進めやすい状態にある。今後も順調に研究を続けられる見込みである。蒲郡市、松阪市、可児市でもキーパーソンと接触することができ、今後も調査を進めることが可能である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2018年度は、都市間比較研究を進めることが課題である。そのため、愛知県蒲郡市、三重県松阪市、岐阜県可児市において現地調査を進める予定である。いずれも自動車関連の工場でフィリピン日系人の雇用が多い。調査地である4市1区のなかで静岡県焼津市のみが水産加工業が基幹産業であり、他は自動車関連産業で外国人が働いている。このような産業特性の違いが、フィリピン日系人の来日ルート、集住のありかた、生活課題、子どもたちの学校への適応に影響を与えているか否かを明らかにしたい。 2017年度までに各地域でのキーパーソンやエスニック団体との信頼関係形成がある程度できたため、2018年度はフィリピン日系人を対象とした定住と就労、子どもの教育に関する数量調査を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、国内調査の回数が予定よりも少なくなかったことにある。また、適当な調査助手を見つけるのが困難だったため、その謝金支出がなく、使用額が予定よりも少なくなった。2018年度はフィリピン日系人を対象とした数量調査を計画しているため、この経費に使いたいと考えている。
|