2017 Fiscal Year Research-status Report
アジアにおける女性の移動にともなう生活世界の再編成に関する実証的研究
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16K04087
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
伊地知 紀子 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (40332829)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻田 涼子 育英短期大学, その他部局等, 准教授(移行) (30586714)
加藤 敦典 京都産業大学, 現代社会学部, 准教授 (60613750)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アジア / 女性 / 移動 / 生活世界 / 共同性 / 潜在力 / 留まる |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、第一回国内研究会として、大阪にて前年度のベトナム北部クァンニン省での共同調査によるデータの検討を実施し、今年度の継続調査内容および打ち合わせをおこなったうえで、メンバーがそれぞれのフィールドで実施した本研究課題にかかる報告を行い、これらに対して受けた質疑は本研究課題を進める留意点として意義のあるものとなった。 第二回国内研究会では、奈良大学の芹澤知広先生によるCo To島から退避した中国人たちに関する書籍についての紹介とともに、中国側からみた移動についての報告をいただいた。これにより、中越国境における移動の流動性と社会変動との関係について、中国側から捉える重要性を確認できた。本研究課題の今後の展開可能性について具体的な示唆を得た。 また、今年度は、各自のフィールドで調査研究を進めるとともに、前年度の共同調査の成果を踏まえ、移住者の母村があるベトナム中部タインホア省にて、移住者の家族のなかで村に留まった人びとに家族史を、元村長に村の移住政策についてインタビュー調査を実施した。これにより、既存のベトナムにおける移動研究において蓄積の薄い海域を通しての移動と背景にある政策およびドイモイ以降の地域社会の変容について基礎資料を得た。移動と政策の関係、陸域と海域における移動の相違、地域社会の変容と移動について、ベトナムでの共同調査から各自のフィールドを捉え直すことにより、調査成果の再検討につながる視点を見出すことができた。調査終了後、それぞれの内容について検討し、次年度以降の方向性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は、前年度の共同調査成果を踏まえた母村調査を実施することで、点が線に繋がる視野を得ることができ、さらに各自のフィールドでの成果と相互参照することにより、各自のフィールド調査だけでは発想し難い知見を得ることができた。さらに、国内研究会を開催し、本研究課題のテーマである移動とこれにともなう生活世界の潜在力について、近接する地域での異なる対象へ調査を実施してきた研究者の報告を受けることにより、今後のインタビュー内容の構成および調査結果の検討に役立ち、予想以上の成果を得た。これらから、来年度以降の研究の展開について各自の調査研究にかかる新たな視点を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の調査成果を踏まえ、各自のフィールド調査および共同調査を継続するなかで本研究課題にかかる(1)移動をめぐる点から線、そして面の把握(2)移動先における生活構造の変化(3)送り出し側の生活世界の変容(4)移住政策の実施過程、以上の4点を共通項として調査を継続する。前年度ベトナムでの共同調査で捉えることができたポイントを広げるために、コト島への移住者の母村のある地域での調査に加え、再度コト島での追加調査を実施する。 具体的には、周辺地域のなかで移住者を輩出した村の構造的位置を把握し、移住政策による影響という視点を母村での調査に加える。また、移住先で得られた親族ネッットワークの維持や変化についてもインタビュー調査を実施する。 今年度は、本研究課題による各自の調査対象地域から得られた成果について、世界社会科学フォーラム(WSSF)においてパネルを設定し各自報告する予定である。 本パネルではケンブリッジ大のHeonik Kwon先生にも報告いただき、最終年度にあたる本研究課題の全般にわたる課題と今後の発展可能性について検討することが可能である。WSSFで取り上げられない研究成果については、各自が関係学会・研究会での報告、論文発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本研究課題について世界科学者フォーラムで研究報告のパネルを組むことが決定され、これについて登録費がかかること、また海外の研究者にパネル報告を依頼することによって生じる経費が確認できたため、次年度使用額が生じた。
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