2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K04100
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
五十嵐 智子 (澁谷智子) 成蹊大学, 文学部, 准教授 (90637068)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ヤングケアラー / ケアを担う子ども / 若者ケアラー / 子ども支援 / ケアラー支援 / コーダ / 手話 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、南魚沼市教育委員会や福祉保健部、社会福祉協議会における聞き取り調査を進め、ヤングケアラーに関する実態調査後にどのような支援体制を作ることができるのかを分析し、『ヤングケアラー――介護を担う子ども・若者の現実』(中央公論新社、5月21日刊行予定)にまとめた。南魚沼市では、教育委員会とヤングケアラー研修会「ヤングケアラーについて深めよう!」も実施し、元ヤングケアラーの語りを教育や福祉に関わる行政関係者に聞いて頂きその対応策について話し合うワークショップを行った。また、子ども・若者育成支援センターの家庭教育チーム「だんぼの部屋」と連携して、日本の学校においてヤングケアラーとは何かを伝えるための寸劇の脚本を作成した。
また、平成28年度に実施した藤沢市の公立小中学校教職員へのヤングケアラーアンケート調査の結果を分析し、日本社会福祉学会第65回秋季大会において「ヤングケアラーに関する小中学校教員の認識――藤沢市の公立小中学校55校の教職員に対するアンケート調査から」を発表した。藤沢市でも「ヤングケアラーに関する意見交換会」において調査結果を説明し、福祉や教育に関わる参加者と「地域で「見守る」「支えあう」ためには…私たちができること」を話し合うグループワークを行った。
さらに、ヤングケアラーへの支援の場になりうる可能性のある子ども食堂について、成蹊大学の公開講座において発表を行い、澁谷智子,2018,「広がる「子ども食堂」」成蹊大学公開講座運営委員会『2017(平成29)年度成蹊大学公開講座講演録』p.23-28.にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
中公新書『ヤングケアラー――介護を担う子ども・若者の現実』の執筆を行い、ほぼ刊行というところまでこぎつけることができたため。本の中では、南魚沼市と藤沢市で行った公立小中学校教員へのアンケート調査とその後の聞き取り調査に基づいて、日本のヤングケアラーの置かれている状況や調査後の支援体制作りに関して分析をまとめることができた。南魚沼市の行政関係者とは丁寧に話し合いを行い、見つけたヤングケアラーをどうつなげるのかについて、ある程度のイメージを共有することができた。
また、本の中では、研究計画書で言及した、ラフバラ大学ヤングケアラー研究グループの所長ジョー・オルドリッジ氏、全国ヤングケアラー連合会長のジェニー・フランク氏、チルドレンズ・ソサイエティ包摂プログラムのヘレン・リードビター氏の研究や支援実践なども紹介し、さらに、「ウィンチェスター・ヤングケアラーズ」の実践的な支援の取り組みや現場で使われているアセスメントシートなどについても論じた。
さらに、南魚沼市と藤沢市においても、教育や福祉に関わる専門職と支援策について話し合う機会を設けて頂き、ヤングケアラーをどう支援できるか、それぞれの立場で考えてもらえるようになったのは、本当に大きな成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、昨年度行った藤沢市福祉健康部への聞き取りをさらに発展させる形で、藤沢市のコミュニティソーシャルワーカーや市民社会福祉協議会などに協力して頂き、教育と福祉をいかにつなげてヤングケアラー支援を行っていくのか、現場の試みを見ていく予定である。具体的には、「藤沢市地域包括ケアシステム」の中で行われている、アウトリーチ型の個別支援や地域支援活動、学習支援事業などにおいて、子どもがケアを担うことへの支援がどのようにできるかを、支援に関わる方々と共に考えていきたい。
また、イギリスのハンプシャー州ウィンチェスターでヤングケアラー支援を行っている「ウィンチェスター・ヤングケアラーズ」の学校支援コーディネーターを招いて、シンポジウムを開催したいと考えている。南魚沼市では、一昨年度および昨年度の教育関係者との話し合いを経て、学校において、教員たちがヤングケアラーに気付く感度をあげていくためのツールや仕組みがあると良いとの合意ができてきた。イギリスの公立中学校でどのような支援が行われているのかを当事者から聞く機会を設けることは、ちょうど良いタイミングなのではないかと考える。
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