2016 Fiscal Year Research-status Report
東京で働く移住女性のシティズンシップ~フィリピン出身女性に注目して
Project/Area Number |
16K04102
|
Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
佐伯 芳子 東京女子大学, 現代教養学部, 研究員 (00774241)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | フィリピン / 移住女性 / シティズンシップ / 東京 / ジェンダー / 人権 / トランスナショナル / 移住女性労働者 |
Outline of Annual Research Achievements |
東京は外国人高度人材や外国企業の参入が進み、2020年に向けて大きく変わろうとしており、労働力として移住労働者が注目されている。本研究の目的は、東京で働くフィリピン出身女性の人権確保のために、現在の彼女らの困難の状況を把握し、送出国であるフィリピンで調査を行うことにより、フィリピンの労働力送出政策の内容にジェンダーの視点からアプローチし、これらの結果をふまえて新しいシティズンシップ論の構築をめざすことである。 今年度は、フィリピン出身女性の現在と将来予測される困難について、これまでの研究対象者のアフターフォローを通して検討することを方針とし、数名の対象者に対して事前調査を行った。そこで新たに、移住女性にとって自身の高齢化が問題であることが明らかとなった。このような新たな課題を含めて次年度に正式な聞き取り調査を実施する。 フィリピンの労働力輸出政策やその背景の調査に先立ち、日本とフィリピンとの関係について、両国の歴史的経過や経済的関係などに関して文献による把握を行った。なぜ女性が80年代に日本に「興行」ビザで大量に来たのかという問題の背景は、経済政策との関係でもさらに追及する必要がある。訪問先については、国際会議でフィリピンの女性団体のリーダーに出会い、研究の趣旨と訪問の計画等を伝える機会を得たので活用したい。シティズンシップ論については、先行研究のレビューを広範囲に行うことをめざし、シティズンシップに関するいろいろな立場による議論を、文献調査によって整理した。特に移民・難民、外国人のシティズンシップに関する文献を中心に研究を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次年度にフィリピンで調査を行うことの準備段階として、研究情報や関連文献の収集と検討を中心に研究を進めてきた。移住女性の聞き取り調査についても、対象者とは事前打ち合わせを行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
東京で働いているフィリピン出身女性の現在と将来予想される困難について聞き取り調査を行い、実態と課題をまとめて調査結果報告書を作成するとともに英語版も作成する。 フィリピンにおける調査を2017年秋に実施する。訪問では、フィリピンの労働団体・女性団体の移住政策に対する基本的な考え方や残されている家族をめぐっての問題、女性が出稼ぎに行くことの影響、またカナダや他の外国への女性の出稼ぎを通して問題となっていることなどを聞き取る。 この二つの調査結果をこれまでのシティズンシップ論と照らし合わせながら、ホスト国における移住女性労働者のシティズンシップ拡大の中身を検証していく。また、同時に母国(送出国)におけるシティズンシップも移住女性労働者にとっては重要であり、トランスナショナルなシティズンシップについて検討を進める。
|
Causes of Carryover |
移住女性の現在と将来予測される困難についての調査は、これまでの研究対象者のアフターフォローを通して行うことを方針とし、数名の対象者に連絡を取り面談によって近況を聞きながら今後の調査の依頼を行った。正式なインタビュー調査とはならなかったので、費用が発生しなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、正式なインタビュー調査を行い、調査への同行や記録の保全と内容の整理のために人件費が必要となる。また、インタビュー対象者へのお礼も検討していく。 インタビュー調査や海外調査の打ち合わせのための会場費の支出が必要となる。
|