2017 Fiscal Year Research-status Report
東京で働く移住女性のシティズンシップ~フィリピン出身女性に注目して
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16K04102
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
佐伯 芳子 東京女子大学, 現代教養学部, 研究員 (00774241)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 移住女性 / 移住女性労働者 / フィリピン / シティズンシップ / 東京 / エンパワーメント / 人権 / 外国人労働者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は移住女性労働者の人権確保のためのグローバルなシティズンシップ論をめざしている。そのためには、送出国であるフィリピンの現状や移住政策の背景を実感として把握することが重要であり、今年度は計画どおり2017年11月27日~12月2日の5泊6日で5名の研究協力者とともにフィリピンケソン市での研究調査を実施した。 東京で働くフィリピン出身女性をめぐる状況からは、トランスナショナルなシティズンシップのあり方が課題となっており、その形成のひとつの要因となりうる送出国と受入れ国の双方の労働組合の役割に注目してきた。今回の調査では、フィリピンで社会運動を中心として活動している労働組合のナショナルセンターを中心に、女性移住者保護を目的とするNGOや移住労働者対策の政府機関(POEA)を訪問調査し、国外で働く労働者に対するフィリピンの対応を多方面から探った。また、フィリピン大学の研究者や国連CIFALとの懇談も行うことができた。女性のエンパワーメントという視点では労働組合による香港で働くフィリピン出身家事労働者の組織化の実践例があげられ、同時にフィリピン国内での活発な組織化と社会運動としての組合活動は日本の労働組合の取り組みにも示唆を与えるものであった。 また、今年度はこれまでのインタビュー調査の結果からフィリピン出身移住女性労働者の現在と将来予想される困難を、「生涯を通したシティズンシップ」の問題として学会報告を行った。年齢を重ねていくことに伴う「社会的権利」が保障されないことへの不安が大きいことを指摘したものである。 フィリピン訪問の際は、移住女性労働者に関する日本の現状について研究協力者の原稿を含んだレポートを作成しそれぞれの訪問先で配布し懇談を行った。フィリピンの経済事情や労働法の違いなどがわかりシティズンシップ論を深めることにもつながった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主要な計画課題であったフィリピンを訪問する研究調査を今年度に終了することができた。フィリピンでの調査では、政府機関と労働組合やNGOなどから移住政策に関する考え方や実際の移住女性労働者保護のための取組みなどを聞き取ることができた。受入れ国である日本と送出国であるフィリピンでは、移住女性労働者の人権を守るために保障すべきシティズンシップについて、異なる立場からのアプローチやそのあり方についての検討が求められていることが明らかとなった。今後はさらに受入れ国で何が求められているのかという視点での研究を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
フィリピンで実施した研究調査の結果については、研究協力者とともに報告書を作成する計画になっている。内容の大まかな分担はすでに決めており今後原稿を持ち寄って検討を行う。また、可能な範囲で学会報告等を行う。 東京で働くフィリピン出身女性の現在と将来予想される困難についての聞き取り調査を引き続き実施する。今年度予定して実施できなかった数名を含めてできるだけ範囲を拡大し、「生涯を通したシティズンシップ」の内容を明確にして問題を顕在化させていきたい。それらをフィリピン調査結果報告とあわせてシティズンシップ論として検討していきたい。 日本とフィリピンの労働組合の構成や労働法が異なるように、日本とフィリピンでは人権をめぐる状況にも差がある。受入国と送出国という経済的立場の違いを視野にいれながら、移住女性労働者にとってのトランスナショナルなシティズンシップの保障という課題に取り組んでいきたい。
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Causes of Carryover |
インタビュー調査を単独で行い予定の同行者を付けなかったことによる。
次年度は、インタビュー調査のまとめのための人件費や研究成果報告書作成のための会議費、および報告書の印刷費が必要となる。
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