2016 Fiscal Year Research-status Report
労働争議の「主体」形成と文化に関する歴史的研究―近江絹糸人権争議の検討
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16K04104
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
梅崎 修 法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (90366831)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 労働史 / オーラルヒストリー / 労使関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
近江絹糸人権争議の組合リーダーであった朝倉克己氏のインタビュー調査を全3回行い、それら全てをテープ起こしした。朝倉氏は、彦根工場の労働組合が結成された時のリーダーである。現在は、このテープ起こしの公開に向けて編集中である。 次に、近江絹糸人権争議の組合リーダーであった辻保治氏が残された「辻保治コレクション」の読解研究会を2回行った。第一に、大阪社会運動協会の中で辻氏が寄託されていた新しい資料が見つかったので、大阪在住の谷合佳代子氏と下久保恵子氏の協力の下で整理作業を行っている。第二に、全資料のうち、賃金制度に関する文書に絞り、賃金制度の性別差に関する分析を行った。つまり、争議後に労働組合が賃金制度に関してどのような要望を発言したのかについて検討した。 近江絹糸の調査に加えて、全繊同盟史などの資料を使って上部団体である全繊同盟史の分析を行っている。産別の動向と個別企業別労働組合の動向を同時に分析することで、人権争議の分析が詳細に行えると考えている。 加えて、海外のオーラルヒストリー・センターとの連携を進めた。イギリス・グラスゴーのScottish Oral History Centre(University of Strathclyde)に訪問し、代表の労働史研究者のProfessor Arthur McIvor氏と意見交換を行った。日本労働史調査の蓄積について先方にも伝わった。具体的には、われわれのオーラルヒストリーを紹介し、労働史の国際比較の可能性を探った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に行う予定であった①オーラルヒストリーの実施、②文書資料の読解、③海外オーラルヒストリーとの連携をすべて順調に進めている。当初予定した資料に加えて、新しい資料も入手されているので、これらの整理には時間はかかるが、研究を進展させる可能性を秘めていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
組合リーダーのオーラルヒストリーに加えて、元女性組合員のインタビュー調査を行う予定である。さらに、資料整理(全体)と読解(賃金制度交渉に絞る)を同時に進め、2年目には、資料紹介論文の刊行と学会報告を目指したい。女性労働者が賃金制度に求めた要望は、男女同じ待遇だけでなく、性別を考慮した待遇改善が労働組合から主張されていた。この主張がどのように構成されていったのかについて文書資料とオーラルヒストリーの双方から探る予定である。
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Causes of Carryover |
辻保治コレクション(一部)のデジタルデータ化とオーラルヒストリーの印刷を予定していた。新しく発見された資料と本人確認が必要なオーラルヒストリーは、公開を慎重に行う必要があった。最終確認を正確に行うため、2年目の実施することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1年目に予定していた文書資料のデジタル化とオーラルヒストリーの印刷を2年目に行う予定である。既に資料自体は入手・整理しているので、あとは公開前確認を行うのみである。
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