2018 Fiscal Year Annual Research Report
Historical Research on Subject Formation and Working-Class Culture in Labor Disputes: Case Study of Human Rights Strike at Omi Kenshi Spinning Company
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16K04104
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
梅崎 修 法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (90366831)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 労働史 / 労使関係 / オーラル・ヒストリー |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に大原社会問題研究所の月例研究会(2018年1月)で「近江絹糸人権争議直後の賃金体系をめぐる労使交渉-性別の違いに焦点を当てて」として報告した内容を改訂し、2018年6月の日本労務学会全国大会で「「家族賃金」観念の形成過程-近江絹糸人権争議の労使交渉を対象に」として報告した。会場でのコメントを踏まえて論文を作成し、2019年1月に学会誌に投稿した。 この論文では、人権争議後の新しい主体としての新労働組合が、家族賃金に関しては、その内部でイデオロギー対立を抱えていたことを明らかにした。新しい労働組合を支えた人々が、賃金体系交渉において近代家族イデオロギーを元に発言していれば、その主張はジェンダー・バイアスを前提にした「家族賃金」になる。それゆえ、労働組合内部での議論を生んだと言えよう。 また、2016年、2017年度に引き続き、近江絹糸労働組合の上部団体である全繊同盟(現UAゼンセン)の元組合リーダーのオーラルヒストリーの報告書を刊行した。産別組織としての全繊同盟の特質を理解することができる資料を公開できた(元UIゼンセン同盟会長の落合清四氏、元UIゼンセン同盟副会長の徳田孝蔵氏)。この他、既に冊子としては公開されている『朝倉克己オーラルヒストリー』を労働史オーラルヒストリープロジェクトのホームページで映像とともに公開できた。このような口述記録の公開によって、史料批判の可能な歴史研究の展望が開けると言える。 さらに、2018年8月、エル・ライブラリーの谷合氏・千本氏を通じて、近江絹糸人権争議のリーダーであった中村幸男氏の日記について相談があり、谷合氏・千本氏・梅崎が中村氏の親族のご自宅に訪問し、エル・ライブラリーへの寄贈について正式な許可を得た。研究利用の許可を得たので、分析が可能になった。ただし、膨大な日記(52年間,29冊)になるので、詳細な分析は今後の課題である。
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