2018 Fiscal Year Research-status Report
障害女性をめぐる差別構造への「交差性」概念を用いたアプローチ
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16K04114
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
土屋 葉 愛知大学, 文学部, 准教授 (60339538)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
時岡 新 金城学院大学, 国際情報学部, 准教授 (30387592)
渡辺 克典 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 准教授 (60509181)
後藤 悠里 福山市立大学, その他部局等(英語特任), 特任教員 (70750199)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 障害 / 女性 / 生きづらさ / 交差性 / 差別 / 生活史 / 障害女性 / 視覚障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年4月には、障害とセクシュアリティを専門とするスウェーデンのJulia Bahner氏(リーズ大学)を招き、公開研究会を開催した。研究会では、Bahner氏による基調講演につづき、本研究より得られた知見の報告を行い、日本・スウェーデン、英国、オランダ、オーストラリアの障害女性をとりまく状況の差異、NPOによる支援活動等についての議論を深めた。この成果は、Ars Vivendi Journal(11)SPECIAL SECTION ON DISABLED WOMEN AND SEXUALITYにまとめられている。 また前年度にひきつづき、生活史法を用いて障害のある女性への聴きとり調査を行った。肢体不自由の女性については、中部地区に加え関東地区においても調査を実施した。さらに、聴覚障害・発達障害のある女性、吃音症の女性に対してもネットワークや団体を通じて調査を実施した。 平成30年度中期には研究会を開催し、視覚障害のある女性の経験について、これまで得られたインタビューデータから検討を加え、知見の共有化をはかった。彼女らは結婚に際して家事・世話役割が期待されており、それが果たせないと想定される(全盲の)女性は、結婚が困難であると指摘されてきた。これを背景とし、ある年代までの女性は三療業(あんま(マッサージ・指圧)・鍼・灸)への従事による経済的自立を、それが困難である場合には、結婚による配偶者男性の収入への「依存」が模索されていたこと、また結婚が困難である場合には、ハラスメントを回避しつつ非婚就業を選択せざるを得ない状況に置かれていたことが浮かびあがってきた。視覚障害女性は、特定のライフコースに囲い込まれ、そこから逃れがたい構造におかれている点で非障害女性と異なる。このことが彼女たちの「生きづらさ」につながっていることを指摘した。以上を学会において報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
調査はおおむね順調に進んでいるが、発達障害女性への調査が平成30年度後半にずれこんだことがあり、事例の分析・考察が不十分である。またこれまで行った調査についても、インタビューデータおよび事前質問紙調査から得られたデータの分析・考察が十分に行えておらず、複合的な要因が絡み合って生じる障害女性の「生きづらさ」について議論が深められていない。このためまとまった知見の公表にやや遅れがみられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度前期は、事例検討会を開催する。昨年度実現できなかった障害のある女性をオブザーバーとして招いた研究会とする。この際、対象者のプライバシー保護には最大限の注意を払う。 今後の調査については、まとめの段階へ向けて、年代、障害種別のバランスを考慮して対象者を選定する追加調査を実施すると同時に、1人の対象者について複数回の追加調査を行うことにより、多次元的な要因が絡み合っている障害女性の「生きづらさ」を「分厚い記述」によって描き出すことをめざす。とくに1回目の調査時から、転職や結婚・出産・入院等で生活の変化が大きかった対象者や、大きな出来事を経験した対象者に再度アプローチすることにより、考察を深めていく。 平成31年度中期には、得られた知見を整理し、学会や研究会で報告を行っていく。また並行して学会誌・商業誌への投稿を行う。さらに一般にもひらかれた公開研究会の開催をめざす。
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Causes of Carryover |
インタビュー調査について、当初目標としていた人数に届いていないために次年度使用額が生じている。次年度に追加調査を実施し、謝金、文字起こし費用として使用する予定である。またオブザーバーを招いた研究会の開催、学会報告、成果報告に付随して生じる旅費や諸費用にも使用する。
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Research Products
(14 results)