2022 Fiscal Year Annual Research Report
An Approach Using the Concept of "Intersectionality" to the Structure of Discrimination against Women with Disabilities
Project/Area Number |
16K04114
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
土屋 葉 愛知大学, 文学部, 教授 (60339538)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
時岡 新 金城学院大学, 国際情報学部, 教授 (30387592)
渡辺 克典 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(社会総合科学域), 准教授 (60509181)
後藤 悠里 福山市立大学, その他部局等(英語特任), 特任教員 (70750199)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 障害女性 / 交差性 / 差別 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「交差性(intersectionality)」という概念を用いて障害のある女性をめぐる複合的な差別構造を明らかにすることであった。具体的には生活史法を用いて①障害女性の経験してきた「生きづらさ」を描き出す、②それらの「差別」に抵抗する、障害女性による生存のための戦略を明らかにすることをめざした。 最終年度である2023年度は、障害のある女性48名への聴きとりから得られたデータについて、主に障害種別(精神障害、発達障害、視覚障害のある女性)、テーマ別(結婚・出産・子育て、性暴力、当事者運動)に検討を行った。 「生きづらさ」は多岐にわたるものであったが、それらは「障害」があり「女性」であることに由来するものであると同時に、居住地域や学歴・宗教経験等とも絡み合い、教育場面、仕事場面において、また周囲の人びととの関係において生成する様相が見出された。 また「生きづらさ」に抵抗する戦略として、他者や公的機関へ訴えもなされていたケースもあった。しかし、相談窓口の間口の狭さや、行政と福祉が連動している構造そのものが相談を困難にし、問題への対処の困難を生じさせていた。一方で、専門家や当事者グループとつながることが、障害女性の現状認識や自己肯定を促し、現実的な制度利用等の行動につながっていた。これらから障害女性のエンパワメントのためには、当事者活動の存在がさらに広く認知され、ここにつながる複数の道すじがつくられること、障害のある女性からの訴えを念頭においた、場合によっては福祉行政から独立した相談窓口が整備されることが必要であることが導かれた。 本研究は、障害女性への体系的なエンパワメントモデルを構築するための、基礎的研究として意義が認められる。なお本研究の成果の一部は、一般読者も対象とした書籍として刊行される予定である。
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Research Products
(6 results)