2016 Fiscal Year Research-status Report
ピアサポートの限界と社会的包摂:多胎育児を題材とした育児マイノリティの可視化
Project/Area Number |
16K04115
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Research Institution | Nagoya Gakuin University |
Principal Investigator |
越智 祐子 名古屋学院大学, 経済学部, 講師 (40455556)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 育児支援 / 少数者 / 多胎 / 多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、多胎育児者を事例として、少数派の育児者の実態を可視化し、地域社会への包摂策について検討することである。初年度は、多胎育児当事者ならびに家族から集められた妊娠・出産・育児体験に関する自由記述について、二次分析をおこなうとともに、結果を踏まえて多胎育児者への質問紙調査を新たに実施した。いずれも、NPO法人ぎふ多胎ネットの研究協力を得た。 単胎・健常を暗黙の前提とする地域における子育て支援策は、多胎や障がい等の少数派の育児者にとっては必ずしも活用しやすいものにはなっていない。出産直後は、NICU等への子どもの入院によって、家族のメンバーがなかなかそろわない。里帰りも、長期にわたる傾向がある。多胎育児者にとって、子どもの祖父母を含む家族は、貴重な育児資源であるが、同時に、葛藤を生む存在でもあった。多胎における妊娠・出産・育児の体験は、単胎の場合とは異なる部分が多いことが先行研究により明らかとなっているが、今回の調査でもそのことが確認された。 地域子育て支援や家族からの支援といった、公的支援および私的な支援と比較すると、ピアサポート組織においては、多胎育児者のニーズに対応できているようすが、ピアサポート組織への好意的反応から伺えた。また、多胎育児は「不安」「大変」と表現されており、多忙で過酷な体験となっていることが示されたが、同時に地域コミュニティにおける諸活動への参加や肯定的感情も少なからず見られた。今後は、多胎育児者と地域コミュニティとの関係についてさらに検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画にはなかったが、多胎育児者を対象とする質問紙調査を実施したことで、当事者と周囲(家族・ピアサポート組織・地域コミュニティ)との心理的な距離感がわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
地域における子育て支援者を対象に、少数派を含めた支援策についてのインタビュー調査を実施予定である。
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Causes of Carryover |
日程があわず、国際双生児研究学会へ参加できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
インタビュー調査現場での情報提示ならびにデータ収集用ノート型パソコン購入費として使用したい。
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