2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K04116
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
小黒 純 同志社大学, 社会学部, 教授 (00388167)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ドキュメンタリー / テレビ / 番組制作 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はテレビの「社会派ドキュメンタリー」の制作過程を解明することを目的としている。国内の主要なコンクールで賞を受賞した作品を研究対象とする。具体的には、(1)作品ごとに中心的な制作者の証言を聞き取り、記録(オーラルヒストリー)をつくる、(2)各作品の比較研究を行い、制作者の動機や関心、技法などの<実践知>を整理、体系化する。こうした研究の目的は申請時点から何ら変わっていない。 このうち、2017~2018年度は上記(1)を重点的に進めている。具体的には、最近約10年間の「社会派ドキュメンタリー」の中から10~12本を選び、どのように制作されたのか全過程を明らかにする。「端緒」→「企画」→「調査・取材」→「編集」→「完成・放送」→「視聴者の反応」→「社会へのインパクト」という一連の過程を、作品ごとにていねいに確認、記録していく。証言記録(オーラルヒストリー)の形にする。 「社会派ドキュメンタリー」の制作過程研究は、他に類例がない。前述のように、そもそもテレビ番組の制作者研究が少ない。実際にインタビュー調査を進めると、「これまで制作過程を具体的に第三者に話したことはなかった」という証言もあった。研究の意義はこうした制作者の語りからも裏付けられている。 2017年度で培った研究のノウハウを生かし、2018年度はさらに研究を前進させ、成果の一部は、日本オーラルヒストリー学会などで報告・発表することを想定している。さらに、上記(2)の目的を実現するために、制作者の<実践知>をどのように体系化していくかについて、研究協力者らとともに議論を重ねている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究を進める上で、最大の難関は、現役のテレビ・ドキュメンタリー制作者は超多忙であり、仕事の合間を縫ってインタビュー調査の日程を確保することにある。インタビュー調査自体については同意を得ていても、まとまった時間が取れないこともしばしば発生した。また、インタビューの聞き手となる研究協力者(西村秀樹氏、辻一郎氏ら)も相当多忙である。申請者(小黒)を含めて、全員が一致した日取りを設定するのは困難を極めた。ほどよい間隔を開けて実施するのが望ましいにも関わらず、なかなか理想に近いスケジュールは組めなかった。 インタビュー調査前には、中心的なドキュメンタリー作品を収集し、視聴しておくことも不可欠なプロセスとなる。入手困難な過去の代表的作品は、調査対象者本人に貸し出しを依頼せざるを得ない事態も少なからず発生した。 とはいえ、確定した日取りには着実にインタビュー調査を積み重ねていった。時には2日連続計7-8時間に及ぶこともあった。 具体的にはこれまでに、インタビュー調査を終えたのは、南海放送・伊東英朗氏、元琉球朝日放送・土江真樹子氏、テレビ金沢・中澤清栄氏、元熊本放送・村上雅通氏ら。また、数人について1度目のインタビュー調査を終えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度夏ごろまで、制作者に対するインタビュー調査の申し込み、および日取りと場所の設定は終えている。2017年度の後半にも、数件のアポイントを入れる予定。これらを着実に実施していくことが必須である。 研究協力者としては引き続き、ドキュメンタリー制作の経験が長い西村秀樹氏(近畿大学客員教授)と、テレビ業界に幅広い人脈と高い見識を備えた辻一郎氏(大手前大学評議員)らに全面的に協力をお願いしている。2人は本研究において、とりわけ大きな力を発揮し、支えていただいている。今後もさまざまな角度からの助言を得つつ、本研究を前進させていく。西村氏には全インタビュー調査に同行を願う。また、辻氏にはできる限りの同行を依頼している。 一方、インタビューを終えた後に行う、いわゆる文字起こし(テープ起こし)、それに続くインタビュー原稿の整理と校閲、インタビューを受けた側の点検、そしてオーラルヒストリー化は、いずれも今年度に本格化させていく。幸いにして、マスメディアの事情に詳しい、文字起こし作業の適任者が、継続して引き受けることを確約しており、信頼関係を築いた上での効率的な作業が進められるめどがついている。 さらに、上記の成果の一部は、2017年度中にも、日本オーラルヒストリー学会などでの報告・発表を想定しており、多角的な視点からの批判を仰ぎたい。
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Causes of Carryover |
ドキュメンタリー制作者に対するインタビュー調査の予定1件が、日程調整の都合上、2017年度に持ち越されたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
インタビュー調査の旅費に用いる。
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