2017 Fiscal Year Research-status Report
黎明期広告業界誌『プレスアルト』広告現物全調査に基づく関西の広告史研究
Project/Area Number |
16K04117
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
竹内 幸絵 同志社大学, 社会学部, 教授 (40586385)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 守弘 京都精華大学, デザイン学部, 教授 (10388176)
熊倉 一紗 京都造形芸術大学, 芸術学部, 非常勤講師 (40645678)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 広告史 / デザイン史 / 歴史社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究2年目はまず広告業界誌『プレスアルト』の冊子体に記載されていたリスト情報を元に、広告作品の詳細来歴情報(広告主やデザイナー、印刷手法など)についての文字起こしを行なった。情報は5619作品分取得することができた。次にこの文字情報と、初年度撮影済の広告現物スナップ写真(画像情報)6183枚との照合作業を行い、画像情報に適切な文字情報を紐づけて行く作業を行った。およそ8割の画像情報について合致させることができた。最後にデータベースソフトを用いてこの結果を管理する仕組みを構築し、文字情報(例えば企業情報やデザイナー名)から関連する画像情報を呼び出すなどの一括検索が可能な形式に生成した。一方このデータベースとは別に、現存またはコピーが確認できている冊子体298冊の全ページのPDF化を行った。これは脆弱な冊子の記事を研究時に確認閲覧可能とするために必要な作業であった。 広告印刷物というエフェメラメディアの研究では、たとえ現物が残っていたとしても制作年すら同定が難しく、まして印刷形式や色数、紙の質などの確定は著しく困難である。この不確かな状況がこれまで広告研究の推進を阻害して来たといえる。本研究の固有性は、破棄され後世に残りにくい広告の実物が現存すること、そしてのみならず、その制作時の来歴が冊子体により明確であるという点にある。従って今回の研究では、数千点の作品画像情報に明確な来歴情報を紐づけて整理することが大きなひとつの目標であった。この当初のねらいの基礎部分を上記の二つ基礎のデータを二年度までに制作することで実装した。すなわちデータベースで数千の作品の検索を行い、その作品のさらなる詳細情報を冊子から読み取るという研究環境を整えることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の調査では、本研究の調査対象である冊子付帯の広告現物がおよそ5560種あるというめどをたてたが、2年目の冊子情報文字起こし調査によりより詳しい状況が判明し、概要に記載の通り5619作品の詳細来歴情報リストがデータ化できた。また冊子体自体は45年間で334号まで存在したことも確認でき、概要に記載の通りうち298冊をPDFデータ化することができた。この冊子の内訳は協力者である大阪新美術館準備室が所蔵する219冊、復刻された戦前版73冊、これらとは別に研究代表者が調査した資生堂企業資料館所蔵分6冊である。 概要に記載の通り二年度まででこれら調査した情報を整理し、作品の様子の記録(スナップ写真の撮影)と、来歴(広告主、制作者、印刷情報等)の文字化を実装し、幻の存在とされてきたプレスアルト誌の概要を研究に供しやすい簡易データベースに形成することができた。また冊子体のPDFデータも298冊分作成することができた。これらは昨年計画したデータ整備の2段階目にあたる。対外的な学会報告等は二年度までで実現していないが当初予定通りであり、成果報告は今後の推進策に記載の通り三年度以降に実施する。以上の通り研究は順調に進捗している。
|
Strategy for Future Research Activity |
二年度までで制作できたデータベースと冊子体PDFファイルを用い、戦後を中心とした広告史研究を推進していく。具体的にはまず共同研究者との研究会を上半期で数回開催する。共同研究者3名と研究代表者、さらにもう1名の研究者を加えた5名が各自テーマを設定して研究を推進し、月次研究会にて相互共有と意見交換し内容を深める。そして本年10月にこれらの進捗や成果を第一回報告会の形で報告する。今回の『プレスアルト』調査によって明らかとなった事実、制作者動向や印刷種別、広告主の意図などを研究に用いることで、これまで知られていない戦後日本の広告史の一端を明らかにしていきたい。 また報告会会場に隣接する展示施設においては、報告会前後に10日程度の会期により展覧会を開催する計画である。展示内容は整理が進んだプレスアルト冊子の現物、付帯広告物の一部の展示、参考資料等を予定している。報告会関連パネルも作成し、報告会に出席できない研究者や一般来場者に向けた研究成果報告としたい考えである。 また、この成果報告をまとめていく過程では、データベース内のさらなる情報整理も推進する。現状では画像(スナップ写真)と、来歴(広告主、制作者、印刷情報等)の照合が済んでいない作品が全体の約2割(およそ1200件)あり、まずはこの調査を推進する。同じ号内での画像情報と文字情報の入り繰りが主な原因と考えられるため、整合していない号内の精査を進めて行く。以上のようにより精度の高いデータベースを整備しつつ第一回の成果報告を行うための研究を推進することが三年目の研究推進計画である。
|
Causes of Carryover |
初年度および二年度では、調査資料と作品の状態から、基礎となる情報整備を少人数で行う必要があった。このため、大きな費用負担なく基礎的なデータベースの作成が実現できた。三年度四年度ではこのデータを用いた研究を推進し報告会開催のための研究成果につなげる一方で、より精度の高いデータベースとして構築しなおす計画である。また代表作品の高精細な写真撮影も行う予定であり、翌年分として請求する助成金はこれらの費用として投入する。
|