2017 Fiscal Year Research-status Report
ケア包摂型コミュニティのダイナミズムと開発主体アソシエーションに関する臨床研究
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16K04121
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
津止 正敏 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (70340479)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ケア/ケアラー / 家族介護者団体 / 家族介護者支援 / 男性介護者 / ケア・コミュニティ / ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究実績として、まず第1に「家族介護者団体(ケア/ケアラー・アソシエーション)」のリスト化作業とその分析及び社会還元に力点を置いて行ってきた。このリスト作りとデータベース化は、この分野での基礎的な研究資料となるものである。今年度には全国各地で活動する介護する夫や息子、及びその支援者の会や集いのリスト化を行った。本研究のカウンターパートである「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」と交流のある団体を中心に151団体のリスト作成を終え、その一部は同ネットワークのHPにて情報発信することが出来た。さらに、全国の認知症の人と家族を中心とする家族介護者団体の全国的な把握を「認知症の人と家族の会」及び「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」との共同研究として次年度6月に実施することとなっている。このリスト作りとデータベース化が実現すればこの分野で始めての大規模な家族介護者団体の基礎資料になるはずである。 第2の研究実績としては、ケアのコミュニティに係る国際研究に関与したことである。一つは、2017年4月に日本(京都)で開催された第32回ADI(国際アルツハイマー病協会)国際会議で、日本の認知症介護に係る家族等当事者5団体のワークショップを開催し、日本の男性介護者のコミュニティ(会や集い)に関する実践・研究の報告を行ったことである。二つには、2017年10月にオーストラリア(アデレード)にて開催された第7回世界介護者会議に本研究の連携研究者である斎藤真緒氏が「日本の男性介護者」の研究報告を行い、各国の関係者とのネットワークを広げてきたことである。三つには、こうした経緯を踏まえて、2018年3月には、「東アジアの介護実態と男性介護者」をテーマに、台湾・韓国の研究者(3人)を招聘して国際シンポジウムを主催し、研究ネットワークの構築を図ってきたことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要でも記した通り、幾つかの重要な研究成果を収めてきている。一つは、介護する夫や息子という男性介護者の会や集いのリスト作成(151団体)である。次年度には全国の認知症の人と家族を中心とする家族介護者団体の把握を「認知症の人と家族の会」及び「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」と共同研究として次年度6月に実施する運びとなっており、この分野での初めての全国的大規模な家族介護者団体の把握という基礎的研究資料になると思われる。もうひとつは、ADI(国際アルツハイマー病協会)国際会議や世界介護者会議、そして「家族主義」という福祉レジームを共通とする日本・台湾・韓国等東アジアでの男性介護者や家族介護者支援に関する国際共同研究のネットワークづくりへの道をつけたことである。これらの研究成果の幾つかは論文等々として発信し社会還元してきた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度となる2018年度の研究推進方策としては、まず、「認知症の人と家族の会(会員約1万2千人)」及び「男性介護者と支援者の全国ネットワーク(会員約7百人)」と共同実施する「全国家族介護者団体の把握に関する調査研究」を実のある研究としていくことである。本研究では、ケア包摂型コミュニティの形成動力についてケアの当事者を主要構成メンバーしてその支援者をも包含する家族介護者団体(ケア/ケアラー・アソシエーション)の組織化とそのダイナミズムの把握を主要な研究目的とし、全国各地に組織される「ケアのアソシエーション」のリスト作りとそのデータベース化に取り組んできた。この分野での全国的レベルでの資料は未整備の状況であるために、次年度において調査が実施され、そのリスト作りとデータベース化が目標通り達成されれば、今後のこの分野の基礎的研究資料ともとなるものである。 また、今年度に取り組んできた家族介護/男性介護者に関する国際的研究ネットワークを、特に「家族主義」という福祉レジームを共にする東アジアにおける国際共同研究体制として発展させていくための取り組みにも着手したいと考えている。 さらに、これらの実証研究を素材にして、本研究が掲げる「ケア包摂型コミュニティ」の形成動力としてのアソシエーション(家族介護者団体)が発揮する社会機能に焦点化する考察を深め、学術的意義ある研究成果を収めたい。本研究のカウンターパートである「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」の10周年記念イベント(2019年3月)において本研究成果の社会還元に努めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
(理由)次年度使用額が生じた理由は、本年度に予定した「認知症の人と家族の会」「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」との共同研究「全国家族介護者団体の把握に関する調査研究」の実施が諸般の事情によって、次年度(2018年6月)に延期したことによる。執行予定となっていた調査表の作成・印刷、発送及び回収費用を次年度使用額とした。 (使用計画)使用計画は明確で、特に会員数の多い「認知症の人と家族の会」「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」とは調査の委託契約を取り交わしての実施となっている。実施時期は2018年6月~9月である。
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