2018 Fiscal Year Research-status Report
現代社会における〈農村コミュニティ〉の意義についての研究
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16K04131
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Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
清家 久美 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 教授 (00331108)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 理論社会学 / 共生 / 新実在論 / 現代社会論 / 個の代替不可能性 / コミュニティ論 / 実証主義論争 / 社会科学の対象化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、これまでの調査で明らかになったNPO法人かみえちご山里ファン倶楽部(以下かみえちご)を対象に再価値化された農村コミュニティが、新たなコミュ ニティが模索されているグローバル化社会、ないしは日本社会においてどのような意義があるのかを明らかにすることを大きな目的としている。 現代において個の代替不可能性を可能にするコミュニティの可能性を小田亮の「普遍性-単独性」とそれが不可能な「一般性-特殊性」という二軸論やその他の現代社会におけるコミュニティ研究から考察し、かみえちごを足がかりに農村コミュニティの現代的意義について再検討することを研究の目的としている。 そのために、H30年度は、H29年度同様に、1)農村コミュニティの価値についての議論を検討し、2)かみえちごの構想する農村コミュニティの考察をさらなる調査により深化させ、その価値をさらに明らかにしながら、3)現代社会、グローバル化社会におけるコミュニティについての議論を整理・検討し、4)個の代替不可能性を可能にす るコミュニティ・共同性のあり方について理論的追求をおこなった。特に4)に関わって、5)現代社会論、コミュニティ論、個の代替不可能性を前提とする共生のあり方についてはかなり重点的に研究を進めた。ハイデガーやカント、ヘーゲルなど哲学における議論の網羅や理論の整理を行い、特に新たな対象化の検討の中で新実在論を深化させた。また、共生のあり方について、ハーバマスの討議倫理、新たな思想潮流としての思弁的実在論、新実在論などを検討した。新実在論と理論社会学の節合によって、社会学の基本的テーマである現在までの社会秩序論の超克を目指した。 以上、5点を主に進めてきた。特に4)、5)の新実在論と理論社会学の接合についての理論的検討を主に進めたが、その成果は日本社会学会、社会学理論学会などで報告している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理由 本研究の研究計画は文献研究(1.2.3.4.5.6)とフィールド研究(7)、成果報告(8)に分けられる。 (1)地域再生・農村社会学に関する文献研究 (2)現代社会論・社会構想論に関する文献研究 (3)共生のための討議倫理学の研究(4)コミュニティ論に関する文献研 究 (5)思想・哲学における個の代替不可能性の研究 (6)NPO /NGOに関する文献研究とおおまかに分けて6つの分野の文献研究が必要とされる。それぞれの分野に おける、理論的検討と総合が行われる。また対象となる地域でのフィールド調査が必要となる。(7)かみえちごの地域活性化の活動等においてインタビュー等の 質的調査を行い、それらをデータ化し分析していく。(8)一定の考察の蓄積に応じて研究会、シンポジウムを開催する。 今年度も(2)、(3)、(4)、(5)を主に進め、本報告にあるように、日本社会学会、社会学理論学会などいくつかの学会で発表し、その成果を出している。 (2)、(3)、(4)、(5)につ いては、共生についての理論的な研究会やハーバマスの討議倫理やその基本となるカントやヘーゲルについての研究会を繰り返し行い、個の代替不可能性を前提 とした共生のあり方についての議論を進めている。さらに、(7)のかみえちごでの調査を行い、彼らの新たに展開するコミュニティの一形態の提示が本研究の深化となった。(8)の研究会では、当該テーマでのシンポジウムが有意義であった。 H30年度に理論的に研究を進めることが主眼になっている理由は、社会学の対象化の再検討のために、新実在論との接合を模索し、有意義な成果を提出した。さらに代替不可能な個と共生の問題を考えることを同時におこない、共生のあり方の議論が進んだ。 以上のH30年度の研究の進捗を必要な全研究から鑑み、やや遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
3年間での研究予定は以下5つのプロセスであった。 1)農村コミュニティの価値についての議論を検討する。2)かみえちごで構想する農村コミュニティの考察をさらなる調査により深化させ、その価値をさらに明 らかにする。3)現代社会、グローバル化社会におけるコミュニティについての議論を整理・検討する。 4)個の代替不可能性を可能にするコミュニティ・共同性 のあり方についての理論的追求をおこなう。5)現代社会論、コミュニティ論、哲学における議論の網羅や理論の整理をおこなう。特に小田の二軸の枠組みについ ては整理、深化させる。さらに共生のあり方について、ハーバマスの討議倫理、新たな思想潮流としての思弁的実在論、新実在論などを検討する。新実在論と理論社会学の節合によって、社会学の基本的テーマである現在までの社会秩序論の超克を目指し、それらをふまえ、農村コミュニティの現代的意義を考察する。 ただ、最終的な現地での調査補完と先方での最終的なシンポジウムをおこなうことができなかった。そのために研究期間延長を申請し、それは許可された。したがって、 H31年度は、最終成果の報告と、内容の深化を目的としてシンポジウムないしは、研究会を開催する。それにより、4年間の研究成果を結実させる予定である。
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Causes of Carryover |
理由(1)研究は計画通りに進めてきたが、先方の都合により、計画していた研究対象のNPO法人での成果報告会を最終年度中に開催することが難しくなった。研究成果を還元するために必要な報告会であるため、これを次年度に開催することとする。 理由(2)研究を一部より精緻にする必要があるため、成果のまとめに更に時間を必要とする。 残額の使途としては成果報告のための旅費に充てる。
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Research Products
(3 results)