2017 Fiscal Year Research-status Report
信頼関係構築に向けたプライマリ・ケア診療の会話分析的研究
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16K04133
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Research Institution | Kansai Gaidai College |
Principal Investigator |
川島 理恵 関西外国語大学短期大学部, 英米語学科, 准教授 (00706822)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 哲也 関西医科大学, 医学部, 講師 (20411506)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ヘルス・コミュニケーション / プライマリ・ケア / 会話分析 / 医療社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,近年の医療教育改革により注目されるプライマリ・ケアの役割について,相互行為的な観点から分析することで,医療者と患者の信頼関係構築のプロセスを明らかにすることにある.平成29年度では,その目的に対して,さらに大きな進展があった.以下3つの点に分けて詳細を提示する.①まずデータ収集に関しては,分担研究者の協力を得て,着実にプライマリ・ケア場面の映像データの収集が続いている.現段階までて200件ほどのデータの収集が完了しており,内75件ほどが初診のデータである.研究計画を超えるペースでのデータ収集を行っている.②次に収集が完了しているデータは,随時トランスクリプト作成(書き起こし作業)を行っている.共同研究者や現在所属しているアルバイトによって,おおよそ半数にあたる100件ほどのトランスクリプトが完成しており,初期的な分析のみでなく計量的な分析にも十分な量に到達しつつある.③以上のデータ収集・整理の作業と同時に,特に診療開始部の分析を進めている.具体的には,以下の3点について分析を進めている.(a)まずプライマリ・ケア受診に至るまでの過程において,患者がどのような意思決定過程を経て,それをどう記述するのかについて分析を進めている.これは日本の医療における患者の自律性を考える上で非常に重要な知見である.(b)次に,医師の質問のデザインが患者の応答にどのように影響しているかについて分析を行っている.開放型・閉鎖型などのデザインについて細かく分類し,応答との対応関係を分析している.(c)最後に,患者と医師の身体位置と問診票の使い方について検討を行っている.患者が記入した情報をどのように使って問診を展開しているのかについて,詳しく分析している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
進捗状況が順調である理由として,データ収集,分析,国際共同研究の進捗について述べる.①まずデータ取集は,予想を超えるペースで収集が完了しており,計量的な分析にも耐えうる数のトランスクリプトが完成しつつある.共同研究者やアルバイトの協力を得て,トランスクリプト作業がスムーズに進んでいる.②分析に関しては,定期的に「医療と会話分析に関するワークショップ」を開催することで,順調に進んでいる.プライマリ・ケアにおける意思決定過程の形成と患者の自律性について分析を進めており,その結果については平成31年度7月に開催される5th International Conference on Conversation Analysisにおいて発表予定である.③平成29年度では,国際的な共同研究の機会を2回得た.まず5月にはUCLAにおいてChuck Goodwin教授のワークショップにて発表を行い,上記の分析について貴重なフィードバックをいただいた.また7月の6th International Meeting on Conversation Analysis and Clinical Careにおいて発表を行い,意見交換を行ったことでかなり新しい知見が開かれた.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,以下の2点について研究を進める.①まずデータ収集・整理に関しては,同様のペースで収集することを目指し,その上で現在までのデータのトランスクリプト化の完成に注力する.特に前半にトランスクリプトをある程度完成し,計量的な分析を行う基盤を形成する.②次に分析については,特に後半にドイツのエッセン大学において客員研究員として滞在し,以下の2点について分析を進める.まず患者による意思決定家庭の報告において,そうした報告に対して医師がどう対応すべきかについてさらに分析を深める.また,実際の治療方針決定の場面について特に分析を進め,他の診療科における意思決定過程との比較のベースを形成する.こうした分析をエッセン大学において定期的に開催されるデータセッションにて発表を行い,国際学会での発表,投稿を行う.
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Causes of Carryover |
3月にアルバイト作業が予定より遅れたため.次年度4月に作業を完了し,支出しました.
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