2016 Fiscal Year Research-status Report
障害はジェンダーにどのように影響を及ぼすのか―軽度障害女性の意味世界から
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16K04134
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Research Institution | Institute on Social Theory and Dynamics |
Principal Investigator |
秋風 千惠 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, 研究部, 研究員 (60601903)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 障害 / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は軽度障害女性の意味世界から障害とジェンダーを考察するものである。筆者は、軽度障害者の視点から「障害」/「健常」の捉え方に亀裂を入れ、不可視であった障害(者)問題を可視化してきた。本研究においても、「障害」を捉える視点を豊かにした ことで、障害(者)とはだれかを問い直し、そこから日本・外国の障害(者)研究に根本的な問題提起を行うこととしている。 本年度の研究目的は関西圏と松江市でのインタビュー調査を行うこと、また、イギリスの障害学論文雑誌(Disability & Society)から資料を得ることだった。 まず調査については、申請後に名古屋で筆者と同じ軽度障害女性の研究をしているグループの存在を知った。連携をとり、インタビュー調査も共に行い、互いの資料を共有していくこととなったため、今年度は関西圏での調査を行っていない。名古屋で障害女性へのインタビュー調査を行い、研究会に参加している。現在5名の調査資料を得ている。また、松江市では自立生活センター松江、障害者団体就労継続支援A 型の障害者支援事業所「ピー・ター・パン」で、3名のインタビュー調査を実施した。資料を分析するには至っていないが、来年度への布石になると考えている。英文論文に関しては進捗が遅いが、現在6本の関連論文を見つけて読んでいる。ジェンダーと障害に関するものはいくつか見受けられるが、軽度に関連するものはやはりまだ少ない。来年度も継続していきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は利き腕である右肘骨折というアクシデントがあり、治療にもずいぶん日数がかかった。筆者自身が障害者であるため、医師から外出や遠出をしても差し支えないとの判断を得るまでに4か月もかかった。そして、骨折の遠因ともなった左膝の状態の悪化がひどく、以前にもまして歩行が困難になっている。骨折後、松江市の障害者福祉サービスを受けることとなり、週1回ヘルパーが入り家事を手伝ってくれることになった。シーツ交換、掃除等をやってもらっている。また、現在電動車椅子を申請中である。6月末には筆者仕様の電動車椅子ができる予定である。そのような理由で調査や出張を諦めざるを得ないことが多々あった。 また、利き腕である右肘の骨折だったため、日常生活にも支障をきたすことが多く、さまざまな場面で思いがけず時間をとられ、研究のために割く時間を減少せざるをえなかった。そして時間をとって研究しようとしてもパソコン操作も思うようにいかないことが多く、もどかしい思いをすることも非常に多かった。 上記の理由により、当初予定していた計画の半分も進捗していない状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は本年度の挽回をするべく積極的に調査をしたい。松江市内では、引き続き障害者団体就労継続支援A 型の障害者支援事業所「ピー・ター・パン」、自立生活センター松江でも調査をしていく。視覚障害者を中心としたNPO 法人「プロジェクトゆうあい」との繋がりも深くなっており、調査について快諾を得ている。名古屋との連携も継続しているので、調査にも頻繁に足を運びたい。以前に面接した人に再度行うことも考えている。調査対象者は、重度障害者、軽度障害者を問わず、男性女性を問わず、年齢、被雇用者、無職を問わず行う。そのような幅広い聞き取りを行うことで、軽度障害者と障害女性の問題が鮮明に浮かび上がると考えている 軽度障害や障害女性のテーマは、まだ新しいものであり、翻訳本や洋書単著として刊行されているものは少ない。イギリス・アメリカの代表的雑誌が掲載する論文は、海外における障害学研究の最先端にあるものであり、本研究にとって不可欠の資料になる。しかし、それを一人で行うには膨大な時間と労力がかかる。来年度からは翻訳代行サービスなども適宜使いたいと考えている。 論文執筆については、まず5月に行われる関西社会学会のシンポジウム「社会学と障害学の対話」に登壇者として参加する。筆者は「『軽度障害』概念を通した、インペアメントのディスアビリティ概念への包摂」と題して発言する予定である。年度内にこのテーマで『現代社会学フォーラム』に論文が掲載される予定である。また、『障害学研究』にも依頼絵論文「障害とジェンダー(仮定)」が掲載される。上記調査の結果から、軽度障害女性についての論文をどこかに載せられるよう努力したい。
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Causes of Carryover |
研究の進捗状況のところにも詳しく書いたが、本年度は右肘骨折というアクシデントがあったため、予定していた東京、名古屋、大阪、広島への出張を見送らざるを得なかったこと。また同様の理由で外出が制限されたため、調査も思うようにできなかったことが大きな原因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は上記のとおり外出が制限されている期間があったが、その間もインタビュー調査の対象候補数名には連絡をとっていた。15人に調査を依頼、快諾を得ており、今後調査を進める予定である。調査対象者には謝礼をお渡ししている。名古屋での調査・研究会も複数回予定している。来年度は関西社会学会シンポジウムの登壇者でもあるが、その他の学会参加、研究会参加を複数回考えており、旅費等に当てる。インタビューのテープ起こし、英文の翻訳代行サービス等、有効に使います。
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Research Products
(1 results)