2018 Fiscal Year Research-status Report
障害はジェンダーにどのように影響を及ぼすのか―軽度障害女性の意味世界から
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16K04134
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Research Institution | Institute on Social Theory and Dynamics |
Principal Investigator |
秋風 千惠 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, 研究部, 研究員 (60601903)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 障害女性 / ジェンダー / 軽度障害 / 意味世界 / 交差性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は軽度障害女性の意味世界から障害とジェンダーを考察するものである。 残念ながら昨年度に引き続き本年度も体調不良のため研究はもとより、生活にも支障をきたすようになっていた。そのうえ93歳老齢の母の介護が重なり研究に割ける時間が少なくなり、年度前半は不本意ながら研究はほとんど進捗できなかったが、母を入所施設に預かってもらえるようになって、年度後半は遅ればせながら調査を再開し研究を進めている。 松江市、出雲市、米子市で紹介を受けた障害女性(精神障害、身体障害)にインタビュー調査を行っている。いずれも障害程度は軽度に入る女性たちである。障害があるが年金の対象とはならないため働く道を選びたいが、女性であるがゆえに高い採用の壁に阻まれる。結婚をしたものの、子どもを持つことを周囲から反対され中絶を余儀なくされて、いまだにそのことに深く傷ついている女性。障害がありつつも、だからこそ女性役割にこだわる人等々。従来の障害研究から漏れていた女性たちの生きづらさ、女性であり、障害があるという交差のなかで動きがとれなくなっていく生きづらさが明確になってきつつある。近年研究の蓄積が進みつつある「交差性」がこの問題を解く重要な概念となると考え、理論構築のためのインプットも継続しており、社会理論・動態研究所をはじめいくつかの研究会での報告も行っている。 幸い科研費の1年延長も認められることとなった。来年度には依頼論文も控えており、学会発表も必ず行いたいと考えている。来年度は必ず成果を残せるよう努力したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前述のとおり、ちょうど科研費を申請し受理された時期と時を同じくするように自身の体調が不良となり入院加療が続き、加えて老親の介護が重なったため、研究に割く時間が著しく減少した。そのため現在のところ当初の計画には程遠い結果となっている。英文雑誌のレビューは進んでいない。しかし、もうひとつの柱である質的調査については、継続している。島根県内、米子市での障害女性への調査は進めており、彼女たちの生きづらさを解く焦点となる「交差性」が具体的に浮き彫りになりつつあり、来年度執筆予定の論文に活かせると考えている。 理論構築のためのインプットとして、研究会への参加は継続しており、現在までに得ているの研究結果を報告し助言を得ている。昨年度書いた論文「社会的包摂とアイデンティティ」にたくさんのご意見をいただいたことで今後の研究に焦点が定まってきた。そのなかから当初は計画していなかったが、イギリス社会モデルとアメリカ社会モデルを具体的に比較検討するといった論点も浮かび上がってきた。今後はそういった点も視野に入れて、研究し論文にまとめることも目指したい。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は挽回すべく、積極的に研究活動をしたいと考えている。 この研究を計画し科研に応募した当初の目的はほとんど果たせていない状態なので、計画の延長を申し出、受諾していただいた。すでに調査は再開している。 すくなくとも来年度は、松江市近郊の調査および関西地方で障害女性への調査を積極的にこなしていく。研究会で得られる意見はたいへん貴重なので、研究会に参加し報告を行っていく。昨年来「障害とジェンダー」をテーマとした論文の依頼を受けている。軽度障害女性の交差性に焦点をあてた論文としてまずはこの論文を上梓し、イギリス社会モデルとアメリカ社会モデルの具体的に比較検討する論文にも着手し、単著執筆の基礎を築きたい。
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Causes of Carryover |
前述のとおり、自身の体調不良と老親の介護とで研究に割く時間を極端に制限された期間が長く、思い通りに研究が進捗しなかったため、科研費の1年延長を申し出で許可された。そのために生じた差額である。すでに調査も再開し、論理構築のためのインプットにも力を入れているが、科研費最後となる来年度は、松江市近郊や関西方面で一人でも多くの障害女性にインタビューを行いたいと考えている。調査対象者30人分のリストもすでに得ている。体調に気を付けながら、研究に励みたい。
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