2016 Fiscal Year Research-status Report
障害者への合理的配慮の効果的な提供のための環境的・財政的基盤構築に関する研究
Project/Area Number |
16K04137
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
星加 良司 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 講師 (40418645)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 合理的配慮 / 多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、2016年度に国内法の体系に導入された合理的配慮概念を有効に機能させるために、「非過重性」という条件が障害者の参加機会の制約につながらない方途を探究するとともに、多様な人々の参加が組織全体にとってのポジティブな価値の創出につながる手法を提示することである。この目的を達成するため、(A)合理的配慮の提供実態の調査、(B)障害者の参加機会を確保する環境的・財政的基盤の検討、(C)企業にとってのポジティブな価値の創出につながるマネジメント手法の開発、という課題を有機的に関連付けて研究を遂行することとしている。 初年度である平成28年度は、課題Bに関してこれまでの研究において明らかにしてきた知見を書籍としてまとめたほか(『合理的配慮』有斐閣)、課題A及び課題Cについて新たに研究に着手した。課題Aにおいては、旅行業の関連事業において提供されている配慮に関して(株式会社ジェイティービー等と協力)法施行後の実態について調査するため、合理的配慮の制約条件として機能する「非過重性」という要件の運用実態に焦点を当てた量的・質的調査のデザインを行った(調査票の作成等)。また、課題Cにおいては、①組織のパフォーマンスを把握するための適切な基準と方法を明らかにするための理論研究を進めたほか(公開シンポジウムの開催等)、その知見を踏まえた研修モジュールの開発と効果分析を進めた(JTB総合研究所『(旅行業向け)障害者差別解消法eラーニング(基礎編)』及び『同(実践編)』を開発し、その分析結果を平成29年度の関連学会で発表予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究のうち課題Aについては、調査対象の調整に時間を要した結果、調査の実施計画に若干の遅れが生じているが、課題B及び課題Cについては、理論研究、アクションリサーチの両面において課題の析出と解決手法の開発が進んでおり、概ね順調に研究が進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
合理的配慮の運用に関する実態調査を早急に実施し、そこで示された課題を分析した上で、これまでに得られた理論研究及びアクションリサーチの結果を踏まえつつ、企業等において多様な人々の包摂を進めるにあたっての実際的な課題を明らかにする。また、開発中の研修モジュールの効果についての実証実験等を経て、マネジメント手法の開発を進める。これらから得られた知見については、ウェブサイト等を通じて随時情報を提供するとともに、セミナーやワークショップ、シンポジウム等を通じて広くその成果を社会に還元する。
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Causes of Carryover |
合理的配慮の提供実態の調査を実施するにあたり、地域差や事業所の規模等を考慮に入れた対象の選定と協力依頼の調整に時間を要したため、調査実施経費の執行に遅延が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究の進捗に従って必要に応じて研究費を執行した結果、今年度は当初の見込み額と執行額との間に若干のずれが生じたが、研究計画は基本的に予定通りに進行しており、次年度も当初予定に従って研究費を執行する。
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