2016 Fiscal Year Research-status Report
若年女性のケイパビリティの形成と社会的包摂のあり方に関する研究
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16K04139
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
天野 敏昭 神戸大学, 国際文化学研究科, 協力研究員 (40736203)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大村 和正 立命館大学, 産業社会学部, 非常勤講師 (30571393)
熊本 理抄 近畿大学, 付置研究所, 准教授 (80351576)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ケイパビリティ / 若年女性 / 社会的包摂 / 生活困窮 / 社会的な自律 / 経済的な自立 / 福祉的自由 / 豊中市 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は、各メンバーが、個別の問題意識に沿って研究を進めたほか、下記の研究会等の開催を通じ、研究の主要テーマである「ケイパビリティアプローチ」の概念について理解の促進を図った。また、若年女性の生活困窮に関する現状、行政施策、支援組織等の動向などの情報について共有を図った。 第1回研究会(2016年7月27日/立命館大学大阪梅田キャンパス)では、先行する調査報告書等に依拠し、生活困窮に陥る可能性のある若年女性の実態の理解を進め、若年女性が、社会的な自律や経済的な自立の問題を抱えていること、生活困窮の問題が個人のみに起因するのではなく、関係性の問題が大きいこと、複合的な問題を抱えていることなどについて確認した。 第2回研究会(2016年10月2日/コミュニティスペースco-arc)では、「ケイパビリティアプローチ」の概念の理解を深める主旨で、穂坂光彦先生(日本福祉大学)を迎えて勉強会を開催し、参加者で議論した。上記の概念に加えて、「エイジェンシー(行為主体性)」、「エンパワメント」などの概念のほか、途上国の開発経済や国内地方部の例に基づく就労支援のあり方などについて理解を深めることができた。 第3回研究会(2017年2月16日/とよなか男女共同参画推進センターすてっぷ)では、豊中市、一般財団法人とよなか男女共同参画推進財団、情報の輪サービス株式会社などが取り組んできた、求職中の女性、転職を考えている女性、独身・シングルマザー・既婚者などを対象とする、転職カフェ事業や居場所事業などの情報の共有を図り、豊中市での調査の契機につなげることができた。 第4回研究会(2017年3月15日/立命館大学大阪梅田キャンパス)では、豊中市における、主に若年シングル女性の社会的な自律と経済的な自立を支援している支援機関での定性調査(聞き取り調査)に向けて、キーワードと調査項目を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では、初年度に、「ケイパビリティアプローチ」などの研究に関係する概念の理解の深化と、豊中市における定性調査(行政機関や支援機関等における聞き取り調査)に取り組む予定であった。研究に関係する概念の理解は一定の進展がみられたが、以下のような現状(理由)により、やや遅れていると判断した。第一に、「ケイパビリティアプローチ」の概念について、概念の検討から、実証的な調査に適用し得る具体的な変数への置き換えの試みに困難性がみられたため、定性調査での具体的な着目点(調査項目)を明確化できなかったためである。第二に定性調査について、豊中市の諸機関との関係構築が2016年度末にずれこんだため、現地での調査を2017年度に実施することになったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度は、以下の内容で研究を推進予定である。 年度の前半において、豊中市の行政機関や支援機関等における定性調査(聞き取り調査)及び統計等のデータ収集に取り組む予定である。具体的には、豊中市において、主に、若年シングルで、非正規で働く女性や無業の女性を対象にして、社会的な自律や経済的な自立を支援している諸機関での聞き取り調査を行い、支援の実態の全体像の把握を進める。聞き取り調査の対象は、社会福祉法人豊中市社会福祉協議会、豊中市立生活情報センターくらしかん(生活相談、地域就労支援センター、無料職業紹介所)、とよなか・起業チャレンジセンター、一般財団法人とよなか男女共同参画推進財団、情報の輪サービス株式会社などである。 年度の後半において、海外での調査に取り組む方向性である。調査対象国は、韓国、フランス、英国で、諸外国における、生活困窮の状況にある、主に、若年シングルの非正規または無業の状態にある女性の支援の現状について調査する計画である。
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Causes of Carryover |
28年度は、調査研究の進捗がやや遅れており、研究会における講師の招聘回数が少なかったほか、本格的な実地調査の実施が平成29年度にずれ込んだため、実地調査に協力をいただく実務家に対して支出を予定していた謝金の支出が少なく、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、年度前半には、主に豊中市において、若年女性の社会的な自律と経済的な自立を支援している、関係諸機関での聞き取り調査を実施する予定で、調査対象となる実務家に対する謝金として、平成28年度の未使用額を充てる予定である。また、調査の過程で必要となる研究会などに招聘する講師の謝金に充当する計画である。年度の後半には、韓国、英国、フランスにおいて、現地調査を実施する計画である。
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