2017 Fiscal Year Research-status Report
若年女性のケイパビリティの形成と社会的包摂のあり方に関する研究
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16K04139
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
天野 敏昭 神戸大学, 国際文化学研究科, 協力研究員 (40736203)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大村 和正 立命館大学, 産業社会学部, 非常勤講師 (30571393)
熊本 理抄 近畿大学, 人権問題研究所, 准教授 (80351576)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ケイパビリティ / 若年女性 / 社会的包摂 / 生活困窮 / 積極的社会政策 / 福祉的自由 / 豊中市 / 自律・自立 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、各メンバーが各自の問題意識に基づいて研究を進めたほか、下記の内容で研究会や聞き取り調査等を実施した。「ケイパビリティアプローチ」の概念と関連付けて実践的な取組みを概観・理解することを主な目的に、豊中市内で女性の転職や起業の支援などに取り組んでいる事業者から聞き取りを行った。 第1回研究会(2017年5月19日)では、情報の輪サービス株式会社の取組みについて、佐々木妙月さん(代表取締役)から聞き取りを行った。女性の民間職業紹介所として1984年に設立された企業の取組みは、「経済的な自立=精神的な自立」の観点に基づいて、主体的に現状を変えていく取組みに発展し、時代に翻弄されない人材育成や労働調整弁でない働き方の実現に向けた取組みに結びついていった経過を聞き取りした。また、緊急雇用創出基金事業などの行政委託事業に広がりがみられ、シングルマザーやシングル非正規で働く女性を主な対象とする「(自立相談支援事業)転職カフェ」やシングルマザーの経済的自立の支援などの事業を通して明らかになった、当事者が抱える課題や施策面の課題などの把握につながった。 第2回研究会(2017年6月16日)では、有限会社協働研究所の取組みについて、与那嶺学氏(代表取締役)から聞き取りを行った。同社の事業および「とよなか起業・チャレンジセンター」の受託事業における起業家支援の現状から、生活困窮を契機とする起業は男性に多いものの女性が起業するケースもみられる。インキュベーションでの起業家支援の経過から、安易に起業を推奨することはできないものの、生活困窮者のしごとづくりが重要であること、就労支援と職業訓練が一体となった支援体制が必要である現状などの認識につながった。 第3回研究会(2017年10月27日/立命館大学大阪梅田キャンパス)では、豊中市における聞き取り調査の内容をとりまとめメンバー間で共有した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
年度の前半に予定していた、豊中市の行政機関や支援機関等における定性調査(聞き取り調査)及び統計等のデータ収集のうち、支援機関等の聞き取り調査から、支援の取組みの実態の全体像や支援者の立場からみたケイパビリティのあり方に対する考え方の把握などで一定の進展がみられた。ここで把握できた内容は、当初想定していた以上に充実した内容を含み、今後の分析において大変有益なものであった。しかし、行政機関の取組みの実態の把握が行えなかったため、やや遅れていると判断した。 年度の後半に予定していた海外での調査は、韓国、フランスで行い、特に韓国では、生活困窮状況にある、主に、若年シングルの非正規または無業の状態にある女性の支援の現状について実地調査できた。また、フランスでは、女性に限定されない取組みであるが、社会経済や連帯経済の概念に依拠するアソシアシオンの取組みを調査し、社会参入の実践例の把握につながった。なお、英国での調査を次年度に行うことになったため、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる2018年度は、以下の内容で研究を推進する予定である。 年度の前半は、前年度に継続して、豊中市の行政機関における定性調査(聞き取り調査)及び統計等のデータ収集に取り組む予定である。具体的には、豊中市において、主に、若年シングルで非正規で働く女性や無業の女性、シングルマザーを対象にして、社会的な自律や経済的な自立を支援している諸機関での聞き取り調査を行い、支援の実態の全体像の把握を進める。聞き取り調査の対象は、社会福祉法人豊中市社会福祉協議会、豊中市立生活情報センターくらしかん(生活相談、地域就労支援センター、無料職業紹介所)、一般財団法人とよなか男女共同参画推進財団などである。そのうえで、前年度に実施した支援機関での聞き取り調査の結果とあわせて、「ケイパビリティアプローチ」の概念に依拠して、豊中市における支援の実態として報告書にまとめる。 また、英国での調査を行う。英国における、生活困窮の状況にある、主に、若年シングルの非正規または無業の状態にある女性の支援の現状について調査する計画である。海外調査については、各国の政策方針の現状と特徴、また、日本との比較検討を視野にいれて、取組み等の現状について報告書にまとめる。
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Causes of Carryover |
2018年度は、年度前半には、主に豊中市において、若年女性の社会的な自律と経済的な自立を支援している、関係諸機関での聞き取り調査を実施する予定で、調査対象となる実務家に対する謝金として、2018年度の未使用額を充てる予定である。また、調査の過程で必要となる研究会などに招聘する講師の謝金に充当する計画である。さらに、前年度に実施できなかった、英国での現地調査を実施する計画である。
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